スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

続『仮面ライダーカブト』――罪と赦し

前回言い忘れていたことですが、もちろん「善悪をそこまでラジカルに問い直していない」というのは、決してそれ自体欠点ではありません。
全体のストーリーはともかく、個々のエピソードには感動的なものも多数あります。「ワームは倒すべし」という原則は変わらないにしても、通常はワームに操られている人間の人格が覚醒することにまつわるドラマが多かったですね。

さて、以前にも、昨年末のライダー映画『MOVIE大戦MEGA MAX』に関する記事「心もまた模倣するもの…」で、『這いよれ! ニャル子さん』のパロディネタに絡めて『カブト』の名も出しました。
たしかに、本来は心を持たない存在であっても、人間を完全に模倣できるなら、心をも模倣できるかも知れません。模倣された心が「本当の心ではない」とは言えない――そうかも知れません。
しかし、そうして容易く「心」を作ることができるのなら、今の心もまた(人間の「心変わり」とはまったく別の意味で)いつ別物に変化するか分からない――という『ニャル子さん』の真尋の疑惑も、根拠のあるものです(最近は、他の邪神たちの登場もあって精神面では素らしいことが分かったのか、真尋の態度もいくぶん軟化してきていますが)。

パロディが元ネタとは別の方向から重要なところに切り込み、この問題は容易な決着を許しません。

さて、以下は『カブト』に関するネタバレありです。




本作に登場する4番目のライダー・仮面ライダーサソードに変身するのは神代剣(かみしろ つるぎ)(演:山本裕典)です。
英国の名門貴族・ディスカビル家の血を引き、豪邸に執事のじいやと二人暮しの「ぼっちゃま」であり、「神に代わって剣を振るう男」「俺は○○においても頂点に立つ男だ」と自称する青年。当初は完璧超人系のキャラとして天道と張り合っていましたが、言うことなすこと世間からズレていて、次第にコメディ要因になっていきました……

ライダーとしての彼は「全てのワームは俺が倒す」と宣言していますが、その理由は姉をワームに殺されているからです。
しかし――視聴者には登場して間もなく知らされていることですが――実は彼自身が、彼が仇として狙っている、姉を殺したワームなのです。本物はすでに殺され、今の剣はワームが擬態しているのですね。
ただ、ワームが擬態した人間は通常、ワームの人格が人間としての記憶と人格をコントロールしているのですが、剣の場合、剣の人格がワームの方を乗っ取っていて、彼は自分がワームであることを知りません(もうお分かりでしょうが、「心もまた模倣するもの…」で引用した『ニャル子さん』のネタは、まさにこの剣のことです)。

物語終盤で自分の正体を知った剣は、絶望の中で「俺はワームの世界でも頂点に立つ」と宣言、敵に回ります。
そして、天道=カブトと戦い、倒されます。
ずっと剣に好意を持たれてアプローチを受けながら、断り続けてきた岬祐月(みさき ゆづき)(演:永田杏奈)は、この直前になってようやく剣の人柄に惹かれ、アプローチを受けようと思い始めるのですが、悲恋に終わることになりました。
「なぜ!? 剣君は自分を見失ってなんかいなかった!!」と問い詰める岬に、天道は答えます。

「奴は言っていた。『全てのワームは俺が倒す』と。奴はその夢を叶えたんだ」

そう、たとえ世界中の誰が許そうと、剣自身が、仇である自分自身を許すことは決してできなかったでしょう。だから、彼は倒される他なかった――最初に設定が明かされた時から視聴者には分かっていたことです。
変に捻らず規定路線通りであったがゆえに、感動的なエピソードでした。

剣は最後は、じいやに看取られて息を引き取ります。
じいやだけは最初から、今の剣の正体を知っていたようでした。幼い頃から面倒を見てきた「ぼっちゃま」が殺されて摩り替わっていることも、しかし今の「ぼっちゃま」は紛れもなく加害者の人格ではなく、本物のぼっちゃまの人格であることも知っていて、だからこそ自分の正体を知れば死を選ぶことを分かっていて、そして、全てを受け入れたのでした。

現実にはあり得ないシチュエーションだからこそ、罪と赦しがどこにあるのか、考えさせてくれます。
                           (芸術学4年T.Y.)

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 芸大・美大・その他美術系学校 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。