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鉄道マニアとオタクと

今回も簡潔に、ひとまず引用から。

 マンガ原作者で評論家・編集者の竹熊健太郎は、一九六〇年の生まれで、オタクの第一世代に属する。竹熊が著した『私とハルマゲドン』は、彼の半生記であり、オタクがどのようにして生成してきたかを知る、興味深い資料としての価値をもっている。
 思春期の頃、竹熊は、とりたてて深い意味のないささいな趣味に没頭し、それを楽しむ自分(たち)の生き方を――まだオタクという語はなかったので――、「変の道」と、自ら名付けていた。彼の「変の道」へと導いた先達の話を、彼は書いている。「国鉄鉄民」さんと呼ばれた、その人物のエピソードは爆笑物である。
 国鉄さんというくらいだから、鉄道に興味があったのだろう。だが、国鉄鉄民さんは、とりあえず、総武線にしか興味がない。彼は、総武線を複線電化することに、異常な情熱をもっていた。そこで、彼は、複線電化を、鉄道管理局や千葉県知事に繰り返し訴えたのだが、同一の人物が何回も陳情しても効果は薄いので、多くの人の一般的な欲望であるかのごとく偽装すべく、千葉県の各地から、異なる文体、異なる消印、異なる日付の手紙を何通も出したり、声色を変えて頻繁に電話をかけたりしたのだという。
 (大澤真幸『不可能性の時代』、岩波書店、2008、p.90-91)


ここから大澤氏は「オタク的な関心のあり方、オタク的な生き方の原点」、すなわち「やがてオタクに発展することになる種子」を「鉄道マニア」の内に見出します(同書、p.92)。
そこに共通する特徴は何かと言えば、

[……]オタクたちは、常に、ごく些細な、極端にローカルで部分的な何かに、情熱を差し向ける。だが、その一小部分に、その断片に、普遍的な世界が圧縮され、写像されているのである。
 (同書、p.93)


しかし、ここからはむしろ疑念も生じます。
「総武線にしか興味がない」というのは、鉄道マニアとしてもきわめて特殊な部類でしょう。
オタクの源流は一般的な鉄道マニアにあるのでしょうか、それとも特殊な鉄道マニアにあるのでしょうか。

さらに、よく見ると引用文中には「思春期の頃」とあります。別人を装って総武線の複線電化を訴えるという奇行も、中学生のすることと思えば納得できる、というところですね。
他方で、歳をとってもやめないのがマニアです。
大澤氏は話を一般化しようとしすぎて、その辺の違いを気にかけていない感があります(逆に、“極端に小さな部分に普遍的な世界が圧縮されている”という程度のオタク/マニア一般の特徴なら、竹熊氏の記述を引き合いに出す必要すら必ずしもなく、一般論として述べられるわけでして)。

精神科医の斎藤環氏は繰り返し、「オタク=虚構志向」「マニア=実物志向」という区別を提唱していますが、この違いは存外大きいのですね。
『僕は君たちほどうまく時刻表をめくれない』など、小説としては過不足もあり、キャラ造型もありがちなものではあります。しかし、実際の土地を題材にして旅情を伝える方はよくできています。
美少女を売りにするなら、問題になるの架空の美少女ですが、鉄道マニアには架空の鉄道は意味がありません。もちろん両方を満たすことも理論的には可能でしょうが、この差異は小さくないのを改めて感じます。

なお、明日も更新はお休みします。


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                           (芸術学4年T.Y.)

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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