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世界革命の行方――いよいよ完結『羽月莉音の帝国』10巻

合格発表出ました。進学決定です。
進学先等について詳しくはまた後々。

第一次合格者発表の時点で、研究科全体で残っている人数がすでに募集要項にある定員より少なくなっていたので、これは定員割れも辞さずということかと、改めて覚悟しましたが、二次ではそれほど減らず…?

 ~~~

さて、現代において建国と革命を目指す大作ライトノベル『羽月莉音の帝国』、ついに完結しました。

羽月莉音の帝国 10 (ガガガ文庫)羽月莉音の帝国 10 (ガガガ文庫)
(2012/02/17)
至道 流星

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最終巻は建国と革命のための戦争です。9巻は日本との交戦を開始したところで引きとなっていました。
ミサイルの性能解説とそれが飛んで着弾する描写に結構なページが費やされ、戦争のやり方の歴史に関する説明なども少々入ります。

しかし、テレビの中継によってミサイルが着弾する様子がリアルタイムで報道されているとか、

 さらに別の局は、炎上する基地の前で泣き崩れている自衛隊員に、レポータがマイクを向けていた。
 レポーターが隊員を責める。
「自衛隊は何をやっているのですか!? 標的になってるだけじゃないですか!」
 (至道流星『羽月莉音の帝国』10巻、小学館、2012、p.23)


といった描写を見ると、昨年の震災とその報道を思い出さずにはいられません。もっともその時は、マイクを向けられるのは被災者で、自衛隊はどちらかと言えば称賛される側にありましたが。
(なお、ここで攻撃の対象とされているのは、戦争のルールに基づき、あくまで軍事施設のみです)

そして、最終巻も春日恒太でした。
今や大革命部帝国皇帝にして「人類の敵」として世界から敵意を受ける、ある意味で誰よりも偉大な存在となった恒太。前代未聞のテレビ放送で降伏勧告などと大活躍です。初期とは180度変わって、「恒太が演説すれば大丈夫だ」という信頼すら抱きたくなってしまうから不思議です。

そして作者コメントにも、

洞察力に富む読者の方は早い段階で気づいたかもしれませんが、本シリーズの構想段階で最初に決まったキャラは春日恒太でした。実は、終始なにもしない彼こそ、本シリーズを貫く基軸なのです。


と。
構想の順番はともかく、作者の過去作品『雷撃☆SSガール』および『神と世界と絶望人間』と比較すれば、本シリーズ最大の新趣向が恒太であるのは明らかでした。それは彼が情報戦担当としての役割を見出す3巻で示され始め、本格的に活躍するようになる5巻辺りからはっきりしてきます(これについては「『羽月莉音の帝国』――政治的武器としての「キャラ」」「中身は変わっていないはずなのに…」といった記事で解説しました)。
この点に関しては、限界小説研究会による以下の論集に「至道流星と情報戦」と題した興味深い論文(蔓葉信博)が収録されています。

サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へサブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ
(2010/12/02)
笠井潔、小森健太朗 他

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この論文は『羽月莉音の帝国』が4巻までしか刊行されていなかった時期に書かれたもので、3巻までしか扱っていませんが、世界の改革という主題を扱った『雷撃☆SSガール』、『神と世界と絶望人間』、そして『羽月莉音の帝国』の3作品を順に取り上げ、情報戦に焦点を当てています。
「王道」を描いた『雷撃☆SSガール』に対し「覇道」の『神と世界と絶望人間』と対なされ、ブランフォード財閥が全世界を支配しているという陰謀史観を全面的に採用した『神と世界と絶望人間』に比べ、複数の巨大財閥や権力者が対抗するというより複雑(そして、より一般的)な世界観を取り入れ、敵対勢力との戦いといった「不確定なリスク」を描くことでより厚みを増しているのが『羽月莉音』という扱いですね。
何より、情報戦という主題に着目し、「実行力のあるプロパガンダの対抗策が明解に描かれることはな」かった(『サブカルチャー戦争 「セカイ系」から「世界内戦」へ』、p.272)『神と世界と絶望人間』からの発展という視点で、恒太の役割を取り上げているのがポイントです。改めて、的確な分析でしたね。

さて、戦争においてもアメリカの「予想だにしない方法」による攻撃を受けた革命部、やはり予定通りにはいかず窮地を迎えますが……革命の行方を是非ご覧あれ。


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                           (芸術学4年T.Y.)

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コメント

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おめでとうございます。哲学の道からは十五年も前にドロップアウトしてしまった人間ですが、用もないところでギリシア語やラテン語を引用するイヤミなやつらなんかに負けないでください。

ご活躍をお祈りいたします。

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方法論の困難

実は昨日は読みながら慌しく記事を書いていましたが、読み終えたところで改めて『羽月莉音の帝国』最終巻につきまして。 うん、建国し世界革命に挑むという途方もないスケールの話を上手くまとめましたね。 ...
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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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