スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

作品の「外」と「中」は連続している

どうも、いくら寝ても眠いのは首筋の凝りと関係があって、血行が悪いので疲れが取れないのではないかと疑っています。
首が疲れないよう、いい高さの読書台はないものか…

 ~~~

さて、現代人ならば、価値というものは「大きさ」や「重さ」のような意味での対象の客観的性質ではなく、価値を認める人間あってのもの、ということはほとんどの人が認めることと思います。
ところが、特定の人間の存在を立てた上でならば、対象に価値が認められるか否かは対象それ自身の性質による、と考えてしまいがちです。
たとえば、(金属の)に価値があるのは人間にとってのみで、蟻にとっては価値はないでしょう。が、人間が金に価値を認めるのは、腐食・劣化しにくい・加工しやすい・光る等の性質によるものだ、というわけです。

こうした考えは、ある程度は正しいでしょう。しかし、そればかりとは限りません。

私が「萌え」に関して主張してきたのも、そういうことです。
たとえば「猫耳」や「メイド」が特定の人間にとってのみ価値を持つ=萌えの対象となるものであることを疑う人はあまりないでしょう。しかし、あるキャラが「萌えキャラ」となるのは「猫耳」や「メイド服」といったそのキャラの属性によるものだ、と考えてしまいがちです。
が、ここでも、実はもっと深く我々自身のあり方、さらには歴史が浸透しているのであって、対象の性質に限れば大差のないキャラが、受容に当たって文脈の違いによって異なる受容をされることもありえるのではないか、という、それだけのことです。

東浩紀氏もこう書いています。

[……]自然主義的な素朴な読解と異なり、物語と現実のあいだに環境の効果を挟みこんで作品を読解するような、いささか複雑な方法である。筆者はこの章では、それを「環境分析」的な読解と呼びたいと考えている。
 自然主義的な読解は、作家がある主題を表現するためにある物語を制作し、そしてその効果は作品内で完結していると考える。しかし、環境分析的な読解は、作家がその物語に意図的にこめた主題とは別の水準で、物語がある環境に置かれ、あるかたちで流通するというその作品外的な事実そのものが、別の主題を作品に呼びこんでくると考える。そして、そのような複合的な視点の導入によって、自然主義的には単なるファンタジーで、荒唐無稽な幻想にすぎないキャラクター小説のなかに、まったく別のメッセージを読み取ることが可能になる、というのが筆者の考えだ。
 (東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2』、講談社現代新書、2007、p.157)


受容美学という分野にもすでにそれなりの伝統があります。
別に「そんなことは誰それがもう言っている。そんなことも知らないのか」と言いたいわけではありませんが、「小説に暴力が描かれれば少年犯罪の時代を、セックスが描かれればセクシュアリティの揺らぎを、ネットやゲームが登場すれば社会の仮想現実化を読み取る」ような「自然主義的な読解」(同書、p.156)こそ、きわめて特殊な、射程の限定されたものように思えてならない、というのは事実です。

そして、「環境分析的な読解」の立場からの批判は、「自然主義的な読解」のみならず、たとえば東氏自身が前著『動物化するポストモダン』で『デ・ジ・キャラット』に対して行った分析にも向けられないでしょうか。
「とくに個性的で魅力的なものかといえば、そう指摘するのも難しい」(『動物化するポストモダン』、p.65)デザインが、作品が「ある環境に置かれ、あるかたちで流通するというその作品外的な事実」によって人気を博するようになるということは、考えられないのでしょうか。斎藤環氏の指摘する「せんとくん」のケースもその一例ではないか、ということです。

あまり新しい話はありませんでしたが、今日はこれだけにしておきます。
                           (芸術学4年T.Y.)

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 芸大・美大・その他美術系学校 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。