オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
本当の自殺者数は…
日本の自殺者は毎年3万人を超す、とされていますが、これについてある疑義を唱える論がありました。
[……]二〇〇九年は八月までに二万二千四百人を超え、新記録樹立か、と悲観視された自殺者数が、九月以降、突然不自然とも思える急激な落ち込みをみせた。
〇九年の下半期、景気の変動は激しかった。東京証券取引所の日経平均は、「すわ、二番底」と言われた時期すらあった。通常、そういう不安定な経済状況下なら、自殺者数が増加するものだ。[……]
(森巣博『日本を滅ぼす〈世間の良識〉』、講談社現代新書、2011、p.161)
ああ、こりゃ、数字に手を加えているのだろう、とこの記事を空港で読んだとき、直感した。つまり、当局による統計操作である。
警察によって発表される年間の自殺者数は、一九九八年に三万人を超えたときから、その年間件数にほとんど変動がなくなる。
それまでの自殺者数は、全体としては増加傾向を示しつつも、景気の高低にともない、結構変動していた。しかし九八年から十数年、年間三万二千人前後でぴたりと止まった。
(同書、pp.162-163)
日本の警察は、「尋常ならざる場所で(および/あるいは)尋常ならざる原因で」亡くなった遺体を、そう簡単には「変死体」と呼ばせない。
警察にも、意地があった。その代わり日本の警察は、一般的に埋葬されるところの「変死体」を、次の三種類に分類し整理する。
(1)「犯罪死体」:その死亡は、犯罪が原因であることが明らかな死体。
(2)「変死体」:その死亡は、犯罪が原因である疑いがある死体。
(3)「非犯罪死体」:その死亡は、犯罪が原因でないことが明らかな死体。
つまり(2)の「犯罪が原因である疑いがある死体」のみを、警察は「変死体」と呼ぶのである。
なぜか?
そうしないと日本中が「変死体」だらけとなってしまうからだった。
っさてさて、二〇〇八年の警察取扱死体数の内訳は、犯罪死体984体、変死体1万5038体、非犯罪死体14万586体、と発表されている。
一九九八年に9万体台だった警察取扱死体は、二〇〇八年には16万1838体に急成長(?)した。日本経済の相対的凋落ともともに、確実に増加していったのである。
それにもかかわらず、警察が定義するところの「犯罪死体」と「変死体」の数には、それほどの推移がみられない。すると、差し引きした「非犯罪死体」のみが、この十一年間に二倍弱、増加したことになる。そして、ここ十年間の自殺者数は、三万二千人前後で動かない。
この統計、どこかおかしいのと、違うん?
(同書、pp.164-165)
某カシノのVIPルームで、知り合い医師がバカラのカードを引いていた。永い間医師をやっていれば当たり前かもしれないが、警察に通報を義務づけられた遺体の「死体検分」をやったことも数多くあり、その方面には詳しい。
わたしは彼にわたしの素朴な疑問をぶつけてみた。
「警察が言う『非犯罪死体』の数に、そもそもウソがあるんですよ。医師には不審死体処理のために、『検案書』というものの提出義務があります。老衰であったり持病があればまた別なのですが、じつは仏さんの死因が不明の場合って、結構多いんですね。だから正直に『検案書』の死因項に『原因不明』って書くと、『それでは困る』という電話が所轄警察の担当者から必ずかかってきます。『原因不明』で困るなら、司法解剖をやって死因を特定すればいいようなものだが、予算の関係で、それができない。結局、適当な病名を見つけ、警察の処理が必要ではない方向に医師は誘導されてしまいます。自殺のみか、他殺が疑われるケースですら、そうなっちゃう。『非犯罪死体』の中には、自殺分や他殺分がかなり含まれているんでしょうな」
なんて、恐ろしいことをその医師は平然とおっしゃった。
よ、よ、予算の関係で、自殺や他殺が、事故を除く「自然死」の範疇で括られてしまう? ぎゃっ!
(同書、pp.165-166)
こうなったらもう後には引けません。
今でも自殺率が世界最高と言われているのに、今更本当のことを言ってさらに自殺者を急増させるわけにもいきません。それに「予算」が増える見込みもほぼありません。
戦時中の「大本営発表」は戦争に負けるまで続きました。今回もそれくらいのショックを受けるまで続いてしまう可能性は高いかも知れませんね。
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(芸術学4年T.Y.)
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