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日常と非日常の間で迷わない――『這いよれ!ニャル子さん』9巻

やはり、あちこちの授業に出ていると時間はすぐに過ぎていきます。
新たに加入したばかりのこと、親睦会等あれば積極的に出て行きたいところですが、授業があっては仕方ありません。研究室の花見も行けませんでした。

そうして出席してみると、文献購読のはずが前置きに当たる話をしているだけで終わった(前回はテキストを配る回で、まだ予習していないので仕方ないのですが、今回も90分ずっと)りするのですが。

 ~~~

さて、このたびアニメの放送開始に合わせるように『這いよれ!ニャル子さん』の9巻も発売されました。
今回は発売日(多分)の昨日にちゃんと届きましたね。まあ書店にも並んでいましたが。

這いよれ!ニャル子さん 9 (GA文庫)這いよれ!ニャル子さん 9 (GA文庫)
(2012/04/16)
逢空 万太

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ストーリーの話の前に、あとがきではコミカライズ『這いよれ!スーパーニャル子ちゃんタイム』は絶賛お勧めされていましたが、同じく今月発売のミラクルジャンプ連載の漫画版とアニメについては言及がありませんでしたね…

さて、今回も八坂家居候の邪神たちがバカ騒ぎをしたり遊んだりしているところから始まり、事件が起こるのは数十ページ以上過ぎてからといういつも通りの仕様です。あくまでこの小説の実質はネタに埋め尽くされた文章です。
ただ、今回の真尋はゲームセンターでニャル子にペアでプリクラを撮られたりというイベントも。当初は冷淡だった彼も、だいぶデレが進んだ感があります。
しかしそんな矢先に、ニャル子達が突如として消えるという事態が発生。しかも誰も邪神達のことを覚えていないようで…?

これはどうやらタイムトラベラーによる過去干渉の結果。3巻で登場した「イースの偉大なる種族」イス香も導き手として再登場しますが、彼女も戦闘能力のある種族ではなし、非力な地球人である真尋がニャル子達抜きで時を遡って事態の解決に向かう、という、いつもとは異なる展開になります。

とまあ、何だか『涼宮ハルヒの消失』風の展開です。
タイムスリップした主人公が過去で昔のヒロインに出会う展開も共通しています(『ハルヒ』の場合、それは『消失』の伏線となる前巻『退屈』でのことでしたが)。
あとがきにも「今回は気分的に劇場版みたいなノリで書いてみました」(p.288)とありますが、これまた映画としてアニメ化された『消失』を思い出しますね。
もっとも、「劇場版」とはたんに

・1巻で比較的よくまとまったストーリー
・普段とは違う配置になる展開

という程度のことなのかも知れませんが(そもそも『ニャル子さん』の場合、一応普段からストーリーは1巻完結ですが、今回の話はところどころで過去にバラ撒かれたネタを回収しつつ、とりわけよくまとまっている印象はあります)。

また、例によって仮面ライダーネタ満載で、最近のフォーゼネタもたっぷりありますが、ネタが時間移動だけに『電王』ネタもそこかしこに登場、さらに『ディケイド』ネタがかなりの比率に及びます。過去に飛んだ先でいきなり『ディケイド』第1話「ライダー大戦」のパロディの光景が展開されていたりとたいへん露骨に。
ただ、『ハルヒ』とも『電王』や『ディケイド』とも違って、メタ色は希薄で、むしろ『バック・トゥー・ザ・フューチャー』風の過去改変ストーリーです。
例によって「そんな設定あったのか」とか「あれが伏線かよ」と設定矛盾や伏線に作中でツッコむメタネタは健在ですが、そうしたメタ言及性をストーリーの全体には持ってこないで、むしろ大筋は単純にするという方針が貫かれているように思われます。

いずれにせよ、非日常をもたらした連中がいなくなって、またSF・ファンタジー的存在のいない日常に戻される展開は、この手の話では定番です。
しかしここで、真尋は意外に悩みません。

 真尋の脳裏に、あの三人と一匹が来てからのあれやこれやが巡り巡る。そのほとんどは真実しょうもない事だったが、稀に、本当に稀にだが、よかった事もあった。
 それらすべて一切合切が失われて、そのままなのか。
 その事実は真尋にとってショックだった。
 (逢空万太『這いよれ!ニャル子さん』9巻、ソフトバンククリエイティブ、2012、p.99)


そして、過去を元通りに改変し直そうというイス香に対し、

 だが、それが可能ならば断る理由もなかった。
 もう傍観者だからと極力巻き込まれないようにするわけにはいかない。ニャルラトホテプ達が消えたことによる影響が、どこまであるのか定かではないのだから。最悪、連中が今まで倒してきた敵が倒されなかった事になって、再び襲ってくるかもしれない。
 (同書、p.100)


色々と理由は付けていますが、とにかく迷わずニャル子達を取り戻しに向かいます。
そもそも「宇宙人や未来人や超能力者のいる非日常世界」を望んでいたキョンが“どちらの世界を望むのか?”と結構に紙面を割いて葛藤したのとは対照的に、そもそも邪神を冷たくあしらい、初期には追い出すことを第一に考えていた真尋が一瞬たりとも「このままニャル子達がいない方がいいんじゃないか」とは考えないのは面白いところですね。
裏を返すと、「葛藤の末にニャル子達のいる日常を選んだ」とあれば、真尋にとってはニャル子との関係がそれだけ決定的になってしまうわけでして、そうして大きく事態が動けば最終回に近付いてしまいそうな気配もありますから、それをしないで「当然のように取り戻し、いつも通りに戻る」展開になったのかも知れませんが。

他方で、真尋のデレに水を差すような演出もあり。
真尋はおぞましいクトゥルー邪神どもの姿を見てSAN値(正気度)が下がらないよう、“真尋の見る邪神群は地球人に、邪神群の見る真尋は邪神に見える”ご都合主義な薬を飲まされ、邪神の幼稚園や小学校は地球人の学校と変わらない光景に見えるのですが、そんな中でも最初に会った時、幼少時のニャル子は顔にモザイクがかかっていました。

「地球人フィルター通しててなお規制されるヤバさなのか、こいつの素顔は……」
 (同書、p.123)


美少女の姿も仮のもの、本性はおぞましい邪神であることをしっかり思い出させてくれます。
他方で、昔からの付き合いであるはずのクー子が持っているニャル子フィギュアが現在の美少女の姿だったといった点についても、さりげなく一応の説明が付いていたりしますが。

というわけで、今回は小学生時代のニャル子、クー子、ハス太の3人が登場、活躍します。
ラストバトルも三人揃って(+α)で、脱力するオチでもなしにきっちり必殺技で決めているので、「劇場版のノリ」に相応しく今までで一番熱いかも知れません。
もっとも、そのバトルの流れそのものが実は映画『仮面ライダーオーズWONDERFUL 将軍と21のコアメダル』のラストバトルを忠実になぞったパロディなのですが、普通に楽しむも良し、元ネタを知って笑うも良し、ライダー映画のバトルのカッコ良さのツボをきちんと押さえていることに感心するも良し、好きなように楽しめます。

ああ、敵の動機もしょうもなさはいつも通りです。

ただ、いつもと少々違うのは、今回明らかになった新設定でした。
(以下、ここだけはネタバレを警告しておきます)




実は真尋が時間干渉の影響を受けない特異体質だった、というのです。
考えてみれば、そもそもニャル子達が消えて皆がその存在を忘れ去ったのに、なぜ真尋は覚えていたのでしょうか。

「じゃあ何でお前らはニャル子達の事を覚えてるんだ? なかった事になってるんだろ?」
「…………」
「…………」
「時空管理局は時間改変の影響を受けないですョ」
「じゃあ何で目を逸らすんだよ」
 あまり突っ込んではいけない点らしい。まあ好意的に解釈すれば、タイムパトロールが時間の影響を受けたら意味がないというところだろう。
 (同書、p.98)


ここで何で真尋自身は、と問われるべきでした。真尋の鋭いツッコミも多少自分のことは棚上げにするフシは、以前からありましたが。
しかし、いかに何でもそんな重大なことが見逃されているはずはないだろう、という思い込みから、読者はストーリーに流されている内に、真尋についても問うべきではないのだろうと何となく思ってしまいます。よもやそれが錯覚とは思わず。
今までのことだって、どうせご都合主義な技術でどうにかしていたのだと思いきや……

読者の思考力を奪う恐るべきトリックでした。

とは言え、今までの敵は真尋や母親の頼子を狙ってくるにしても、顔だとかゲーム知識だとかのしょうもないことが狙いだったのですが、今回はまさかの重大設定発覚です。今までと決定的に違ったのがここです。
この設定そのものがまた『仮面ライダー電王』なので、あまり深く考えても仕方ない気もするのですが、真尋は本当に純粋な地球人なのか、という疑問はどうしても生じます。

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プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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