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“形而上学”とは

ちょうど前々回記事へのコメントに対する返答を兼ねて、ブログタイトルの話でもしましょうか。

> しーさん

「形而上学(metaphysics)」という語は今では広く使われてはいますが、訳語を見てもなんだかよく分からないものの一つです。
哲学の一部門、と言えばそうですが、その規定は哲学者ごとに様々で、現代では「現実離れした、抽象的な思弁」といった批判的な意味で使われることもあります。

ですがまず、おっしゃる通り、この言葉はアリストテレス(BC384-322)の著作に由来します。

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訳語の字面を見ていると形而上学に対する“形而下の学”があるのか、という気がしますが、この語の成り立ちは meta + physics ですから、「形而下」に当たるのは physics =物理学となります。
ただし、physics の語源でもあるギリシア語の「ピュシス」は「自然」を意味しますから、『形而上学(メタ・ピュシカ)』と対をなすアリストテレスの著作は『自然学(ピュシカ)』です。

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(※ ↑抄訳)

「メタ」をいうと現代語では「~を超えた」という意味が一般的ですが、ギリシア語の前置詞「メタ」の基本的な意味は「~の後」です。
そもそもアリストテレスの『自然学』『形而上学』はノートのような断片的な遺稿をまとめたもので、内容は重複も多く、必ずしもまとまったものにはなっていません。
そういうわけで、形而上学とは元々「『自然学』の後の著作」という意味だった、というのが通説でした。

 メタ・タ・ピュシカ(「自然学」に属する諸論考の後に位置付けられたアリストテレスの諸論考の総称)という表現のさしあたって純粋に書誌的な意味が後になって、これら後に位置付けられた諸論考に含まれるものを哲学的に解釈した特徴に転じたのだというのは周知のことである。しかしこの転義は、ふつうにこの表現が用いられるような無邪気なものではない。むしろこの転義はこの諸論考の解釈をあるまったく特定の方向に押し進め、そうしてアリストテレスが論じたことの理解を「形而上学」として決定的なものにしたのである。しかし、アリストテレスの「形而上学」の内に取りまとめられたものが「形而上学」であったかどうかは、疑わねばならない。
 (マルティン・ハイデガー『カントと形而上学の問題』)


しかしこれには異論もあって、現代ではあらためて、やはり「形而上学」は最初から「自然を超えたものについての学」として構想されていた、という説もあるとか。

私はこうした議論に深入りするつもりはありませんでしたが、ブログタイトルを付けるに当たってこうしたアリストテレスからの由来を一応念頭に置いていたのは事実でして、通俗的解釈あるいは最近有力な説? に従い、「自然を超えたものについての学」の意味で用いました。
自然学(ピュシカ)の方は「物理学」の語源であることからも分かるように、こちらは自然科学――「もの」についての学であるとすれば、それのみの内には回収されないものについての学、ということです。

カントの場合、形而上学のテーマは「魂の不死・自由・神」であるとしていますが、これも精神的な領域であることはお分かりかと思います(私は必ずしも、これに直接準拠はしませんが)。


……むしろ私としては、高校の「倫理」でアリストテレスについてどんなことが教えられているのか気になりますね…


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※ 現代では「抽象的な思弁」として否定的に扱われることも多い「形而上学」ですが、他方で現代哲学者には――ハイデガーを筆頭に――あえて「形而上学」を掲げる人もいて、哲学書や論文のタイトルにもしばしば登場します。
まあ「○○と××」はタイトルの形式としてはもっともありふれたものの一つですが、私の頭の片隅にはデリダの論文「暴力と形而上学」(『エクリチュールと差異』収録)があったかも知れません。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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