オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
かくも危険な状況――『パンツブレイカーG』(シリーズ2巻目)
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そして、昨日発売のライトノベルです。
タイトルに巻数が入っていないので多少分かりにくいですが、シリーズ2巻目となります。ちなみに「G」が何なのかは結局不明でした。
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基本設定は過去に書いた通り。半径2m以内のパンツを自動で消してしまう「ギフト」(超能力の類)を授かってしまった主人公・汐正幸と、彼の編入した醍醐学園(ギフト能力研究開発機関でもある)を巡る物語で、「パンツを消す能力」という一見しょうもない設定を真面目に追究し、差別・ケア・超越者といった問題にまで切り込んだ快作でした。。
前巻の主要メンバーに加え、今巻では正幸を敵視する少女・野田雨音(のだ あまね)(もちろん、その能力ゆえに人の恨みを買うことは珍しくないのですが、今回は何やら特別な事情があるようで…?)と、野生児サンダーの教育係でもあるテレパシスト・丸山香奈子(まるやま かなこ)が新登場。
そんなメンバーで今回は海に行きます。水着です(作中時間は冬なのですが、実験のためとか色々設定して南の島へ)。

(カラー口絵より)
一部、本文と描写とイラストの容姿がすぐに結び付かないキャラもいますし、しかも未知の新キャラも加えているので多少混乱しますけれど…
とは言え、左上の「どの水着がセーフorアウト?」とある通り、「パンツブレイカー」の能力により水着は消えます。なんという危険な状況。そもそも正幸自身は水着を着ることができるのか…?
まあ、誰の水着が消されるのかを含めてその辺の結果は読んでのお楽しみということで。
とにかく、パンツに近いものはブルマ・水着なども対象となるというのは、その手のものを上に穿いてガードしても無駄にするための設定でしょうが、同時に、謀ったように「体育」の授業を不可能にするのに最大の威力を発揮します。だから表紙も体操服なわけで……
この表紙は正幸の妹の美幸ですが、正幸の世話をするため、一緒に醍醐学園に編入してきた彼女、健気な献身の一方で、そうした境遇と兄に依存している風もあり、ひょっとするとメインヒロインの影那以上に印象の強いヒロインでした。そんな美幸の存在感は今回も健在で、正幸に恨みを抱く野田雨音が同学年(中学2年)ということもあり、そちらとの関係でも活躍を見せます。
同時に、かなりの苦労を重ねてきたと思われる中で彼女が兄に寄せている信頼も語られ、他にも兄妹仲の良さを思わせるシーンは多目です。
正幸は相変わらずカッコ付けたポーズと台詞が趣味だったり(「かっこいいポーズ」というフレーズの多用が目立ちます。もっとも、1巻のカラー口絵が無駄にカッコいいのが一番可笑しかったかも知れませんが)、事故でも女子のノーパンを堂々と見ているようなスケベだったりしますが、この設定だとなんだか可愛げがあります。
自分の能力による被害に対して言い訳せず、立ち向かうべきものには立ち向かうという本当の格好良さも備えていますし。
そんな正幸の、水着女子の色気に関する(やけに真剣なゆえに変態的に聞こえる)コメントに美幸は普通に応じていたりするあたりもまた仲の良いところ。
他方、クラス委員長の松葉瞳は今回も何やら不遇です。
前巻では、正幸を指導しようとしては性懲りもなく何度もパンツを消されていた彼女ですが、今回も、正幸に近付く前にパンツを脱ぐ美幸の行為を不要にするべく奮闘したりしますが、何とも空回りしている感が強く……美幸には世話役の立場を巡ってライバル視されていますが、ほとんど勝負になっていません。
クライマックスの展開では中心人物となりますが、その状況そのものがまた不遇で……「元来、そんなに気が強くない」からこそ、「人目や義務」をもって「自分を追い立て」、「強く」行動するよう心がけている彼女の内面にも触れられているだけに、その辺に気付いてもらえれば少しは変わるのかも知れませんが。
さて、1巻でクライマックスに関わっていたのは正幸・影那・サンダーの3人だけで、美幸と瞳は蚊帳の外でした。この作者、設定の追究とドラマ性はしっかりしていますが、無駄なくピースを組み上げて完成度の高い物語を作ることに関してはやや弱い感がありますね。同じイラストレーターとのコンビによる『H×H! お風呂は異文化コミュニケーション!?』も、異種族・異文化との緊張を孕んだ関係というテーマは明瞭でしたが、タイトルにあるほど「風呂」のストーリー中に占める比重が大きくない印象でしたし……
ただ今巻では、クライマックスには大多数のメンバーが関わってきます。新メンバーの雨音と香奈子を加えて能力バトルめいた展開にもなります。まあ、主人公がこの能力で活躍するにはかなりの強引さが必要ですが、そこにも一応、「パンツブレイカー」は妖刀「浦沙雨」への願掛けによる、という設定を活かしてきます。
結局、「パンツブレイカー」という能力でやれることは1巻でかなりの部分やって、その極限まで見せてしまった感がありますから、多くはその変奏になりますけれど、そこで十分豊かな可能性を見せてくれているのも事実でして。
能力を制御できるようするのは、何より正幸自身にとっての最終目標ですが、そうして制御した上でそれを活かして活躍するような代物でもないので、制御は本当に目標地点にしかならないでしょう(そして、色々あってこの点では進展せず)。
ラブコメの方もあまり進展はしていないようですね。
そしてもちろん、この設定でやっている以上エロはあります。特に香奈子は醍醐学園の生徒ではなく成人女性、そしてまだ「パンツブレイカー」について十分に知らない新キャラ……と来れば、後は言わずもがな。
この点についての欠点は逆にパンツが見えないことでしょうか。いや、2m以内に近付いていない場面では可能ですが、しかるべき場面でイラストが対応していないので。
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