スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

正義の担い手/説明しないのも一つ――『時間のおとしもの』

頭痛が治まりません。軽度のものは半ば諦めました。

 ~~~

私が「君の正義と俺の正義は違うか」で論じたのは、一つには『仮面ライダーW』と『フォーゼ』のスタッフ(特に脚本)が重なっていることを踏まえて、宇野氏の指摘する問題(それが『W』では問われずにいたという意味で、宇野氏の指摘は正当でした)に対し作品の方が答え得たか、ということでした。
が、他方ではやはり、宇野氏の論に内在的な問題があります。

そもそも氏の言う「ビッグ・ブラザー」とは、ジョージ・オーウェルの『1984年』に登場する仮想人格的な独裁者であって、つまりは批判の対象でした。
実際、氏は「システム批判が必要」であることは当然認めつつも、「支配する権力と支配される私たち」という対立図式(村上春樹の言う「壁と卵」)がはすでに通用せず、私たちも誰もが「リトル・ピープル」=権力の行使者であって権力システムの一部である現在にあって、いかなるシステム批判が可能かを問うています。

ところが、「リトル・ピープルの時代」が、国民国家のレベルでの共同幻想が失われ、相対主義の蔓延した現代(当然、リオタール等の言う「ポストモダン」像が念頭にあるのでしょう)と重ね合わされると、「ビッグ・ブラザー」は正義の担い手であったことになってしまいます。
こうした視点は相容れるのでしょうか。

「ビッグ・ブラザーは抑圧的な支配者でもあるが、同時に共通の“正義”の担い手でもある」という両義性を認めるとしましょう。
しかしその場合、「ビッグ・ブラザー」の支配に反抗することは正義に反することになります。
結局、支配者によって担保される「正義」を皆が共有しているのなら、「私たちが権力システムの一部であり、外敵と戦うようにシステムに抵抗することはできないこと」に変わりはないのです。そうした状況は、必ずしも「リトル・ピープルの時代」に始まったことではないことになります。

ジョージ・オーウェルは外部から全体主義国家を批判しただけで、全体主義国家に生きる者にとっては、全体主義こそが正義なのでしょうか。
そうでないとしたら、必ずしもビッグ・ブラザーによって担われるものだけが「正義」ではないことになるでしょう。

つまるところ問題はやはり、宇野氏が「大きな正義」を「国家」のレベルでしか考えていないことに帰着します。

 ~~~

手短な紹介になりますがライトノベルも。

時間のおとしもの (メディアワークス文庫)時間のおとしもの (メディアワークス文庫)
(2012/01/25)
入間 人間

商品詳細を見る

「時間」を扱ったSF短編4本を収録した短編集です。
他作品の登場人物がところどころに登場するのは入間氏の作品ではいつものことですが、この直前に刊行され、同じく時間SFであった『昨日は彼女も恋してた』『明日も彼女は恋をする』とも繋がりがあって、直接共通する登場人物はいないものの、タイムマシン研究者・松平の「師匠」が登場したりします。
『昨日は彼女も恋してた』『明日も彼女は恋をする』では作中で『バック・トゥー・ザ・フューチャー』ネタを連呼していたような自己言及も相変わらずで、「ラベンダーの香り」はもちろん筒井康隆『時をかける少女』ネタですね。
ちなみに、主人公の少女が次々に並行宇宙の自分と入れ替わるという「携帯電波」のストーリーも同じく筒井康隆「果てしなき多元宇宙」を思わせるものあり。とは言え、事態はそこからさらに思いがけぬ方向に展開しますが…
時間移動を絡めて同一人物が増殖するという「ベストオーダー」のネタは「ドラえもんだらけ」を思わせる面もありますが、はて同一人物が4人になってしかも犯罪に関わるというのは清涼院流水『19ボックス』でも見たような…

ところで時間移動といえばタイムパラドックスが付きまとう問題ですが、本作は「パラドックスを引き起こすようなことをしたらどうなるのか」という追究はもちろん、多くの場合SF的事態が発生する理由すら説明していません。そんなことはさておいて青春ドラマやらミステリやらを展開していたり(しかも例によって、ミステリとしての伏線とミスリードは入念です)、「謎」の方をホラー的なオチに使ったりしているのが持ち味ですね。

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

まとめtyaiました【正義の担い手/説明しないのも一つ――『時間のおとしもの』】

頭痛が治まりません。軽度のものは半ば諦めました。 ~~~私が「君の正義と俺の正義は違うか」で論じたのは、一つには『仮面ライダーW』と『フォーゼ』のスタッフ(特に脚本)が重なっていることを踏まえて、宇野氏の指摘する問題(それが『W』では問われずにいたという...
プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。