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公然と立ち並ぶ裸体たち

そう言えば前回までできちんと解説していなかった気がしますけれど、『ささみさん@がんばらない』は神話に取材したファンタジー、それも主な舞台が日本であるだけに主要登場人物は日本神話系です。
それを踏まえて…

 こんな逸話がある。
『死の神』イザナミが愛する夫に裏切られ、「一日に千の死をばらまく」と呪いの言葉を放ったとき。
 その夫、イザナギはこう応えた。
「ならば我は一日に千五百を産みだそう」――と。
「あんたは間違ってないよ、命を数字とみれば、千死んでも千五百産みだせば帳尻はあうよ、むしろ増えるよ。あんたはそれでぜんぶ解決だって、今みたいに偉そうな顔したんだろ」
 (日日日『ささみさん@がんばらない8』、小学館、2012、p.196)


神話に忠実に、『ささみさん』の8巻においてついに登場した創造神イザナギも、命を数としてのみ見て、犠牲が出たらまた産み出せばいいと主張する非情さを見せます。
しかし裏を返せば、これはあくまで、命を意のままにするほどに強大ではあっても、やはり人間の視点の延長上にある、とも言えます。
一人一人をかけがえのない他者として向き合うことができるほどに彼は超越者ではなく、個々のものの個性を剥奪する高所からの視点という、それ自身やはり限られた視点しか持ち得ないのです。

だから神話の時代から何千年経っても、妻と和解すらできていないのでしょう。

ある意味ではやはり、限界ある多神教の神々です。

さて、対する敵は『悪徳オカルト結社アラハバキ』――「多神教の内なる一神教」です。
全ての神話の「神々」を呑み込み、一つにしようとする相手との全面戦争です。

 多神教は原始、必ずといっていいほど一神教的な性質を孕む。
 ひとつの巨大な『神々』が無数に枝分かれしたものが多神教なら、その根っこにあたる。
 (同書、p.171)


「ひとつの」「神々」(複数形)という撞着表現こそ核心を衝いたセンスでしょう。
実際、古代ギリシアにおいても「神」はつねに多数存在するものであると同時に、その多数でひとつのまとまりを形成するものとして捉えられていたとも言います。
神がつねに複数でなければならないというのは、複数からなる一つの全体から切り離せないことの裏返しでもあります。

 ~~~

話を変えて別の読書の話でも。

股間若衆: 男の裸は芸術か股間若衆: 男の裸は芸術か
(2012/03/30)
木下 直之

商品詳細を見る

冒頭でいきなり登場するのは、東京・赤羽駅前の銅像、川崎普照《未来への讃歌》ですが……
全裸の男二人の像。しかしその股間は……

川崎普照《未来への讃歌》

 おそらく、これは長い年月をかけて、日本の彫刻家が身につけた表現であり、智慧であった。美術品であるということは、実は「錦の御旗」にならない。(……)いくら美術品であることを主張したところで、いつ官憲の基準が変わるかわからないからだ。
 (木下直之『股間若衆 男の裸は芸術か』、新潮社、2012、p.7)


ここから話は明治以来の(江戸期の記録にもわずかに触れられます)裸体表現に対する取り締まりと、それに対応しつつの裸体表現の変遷のことになります。豊富な図版付きです。江戸時代の生き人形という、美術史からは外れたものについても言及あり。
ここでも官憲の取り締まりが場当たり的であることは感じられますが、しかしこの場合、展示する方も同じかも知れません。
少なくとも今では、美術館やギャラリーの展示室にある限りは取り締まりは受けません。問題は公共の場にあることです。では公共の場にこれをパブリック・アートとして展示する側の意図は何なのか。

いつも通っている道にある彫刻の写真を見せられても、多くの人は分からないと聞きました(自分でもそうだろうと思います)。
「美術」としてはややマイノリティでありながら、実は世に溢れている彫刻。
しかし、気にも留められないものを並べて、どうするつもりなのか……

 参照:偶像破壊の歴史

それはそうと、取り締まりの他にももっぱら男の裸体表現に関する四方山話を集めた本ですが、面白いですよ。

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そう言えば前回までできちんと解説していなかった気がしますけれど、『ささみさん@がんばらない』は神話に取材したファンタジー、それも主な舞台が日本であるだけに主要登場人物は日本神話系です。それを踏まえて… こんな逸話がある。『死の神』イザナミが愛する夫に裏...
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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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