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そう見せたいと言うのなら……

ライトノベル新刊など色々ある中でワンテンポ遅れた話ですが――

アニメ『這いよれ!ニャル子さん』第11話はオリジナルエピソードでした。
が、その内容云々よりも、原作に対応する箇所にあった一場面から取り上げた方が、ある特徴を浮き彫りにしてくれるのではないかと思われます。
たこ焼き屋台を営業しているルーヒー・ジストーンに関する場面です。

「ありがと、おばちゃん」
「……それとね、私の事はお姉さんって呼ぶといいと思うわ」
 少女にしか聞こえないように、ルーヒーはこっそりと指摘した。先ほどからずっと気になっていたキーワードをそのままやり過ごせるほど、自分はまだ歳月を重ねていない。若さを誇りに思ってすらいる。先輩の女として、それを少女に教えてあげなければ。
「うんっ。わかったよ! おねーちゃんのおばちゃん!」
 駄目だ、こりゃ。
 苦笑して、ルーヒーは少女の頭を優しく撫でてあげた。ふと保護者に視線を向けると、あちらさんは申し訳なさそうにぺこりと頭を下げる。種族は違えど同じ女として、おばさん扱いされる悲哀を分かってくれているらしい。
 (逢空万太『這いよれ!ニャル子さん8』、ソフトバンククリエイティブ、2011、p.49)


対してアニメでは、アニメオリジナルキャラのグタタン(迷子の邪神の少女)におばさん呼ばわりされたルーヒーは露骨に表情を固くし、自分が行った方向を誤魔化しておいてほしいという真尋の頼みを無視します。
「苦笑して」見送る原作と比べると、(最近始めたばかりとは言え)子供客も多いであろう商売をやっている身として、“大人気ない”印象なのは間違いありません。

この辺がその他のキャラの行動にも、そしてストーリーにも影響してきます。
原作の真尋なら朝ごはんはちゃんと作りますし、邪神三人の暴走はねじ伏せて黙らせ、

ニャル子さん5巻
 (逢空万太『這いよれ!ニャル子さん5』、ソフトバンククリエイティブ、2010、p.35)

そして邪神たちも普段はバカばかりやっていたり、仕事のことを忘れたような顔をしてツッコまれたりしていますが、ここというところ(まあ主にドンパチ限定ですが)ではきちんと決めます。

 居候トリオの言葉を聞いて、真尋は胸が熱くなるのを感じた。無化h氏はどうだか知らないが、今のニャルラトホテプとクトゥグアは何だかんだで喧嘩するほど仲がよいように見える。そして、二人の共通のよき友人であるハスター。協調性ならば子供の頃の比ではないだろう。しかも、地球圏では最強のその三人が、今はそれぞれ本気の姿になっているのだ。
 (同書、p.280)


いざというところでこれだからこそ熱いということを作者はよく心得ています。
とりわけハス太はつねに味方のフォローに回ります。

「ああもう、騒ぐな! 向こうに聞こえちゃうだろ!」
「あ、それはだいじょぶだよ、まひろくん。キッチンの入り口に真空つくっておいたから。空気がなければ、音もつたわらないよっ」
 便利すぎる特技だ。安定感抜群のサポート要員のハスターだ。この気配りを宇宙人全体に求めたいのだが、きっとそれは無理な願いなのだろう。
 (逢空万太『這いよれ!ニャル子さん6』、ソフトバンククリエイティブ、2010、p.136)


 コクピットのキャノピーが開いていく。
 宇宙服も着ないで真空の宇宙とご対面。確か生身で宇宙空間に出ると血液が一瞬にして沸騰したり宇宙船で即死したりと、その手のやばい話ばかり聞いている。何をどうしていいか分からず、両手をばたばた振ろうとすると、横からハスターに優しくなだめられた。
「だいじょぶだよまひろくん、空気の壁はちゃんとはってるから」
「お、おま、お前ら、先に言えぇぇぇ……!」
 (『這いよれ!ニャル子さん8』、p.199)


他方でアニメ第11話の場合、発情したり朝ごはんを求めたりで暴走する邪神を相手に真尋は鎮圧するより逃げ出し、挙げ句に邪神たちは真尋とグタタンを敵(はぐれショゴス)との戦いの余波に巻き込んで、真尋は怒りを爆発させます。
はしゃぎすぎて真尋に怪我をさせたりする場面は、第3話においてすでに見られました。

全員に関して言えるのは、責任の意識の違いです。

ところで、本作の料理描写はなかなか念入りです。

 冷蔵庫を開ける。ここ最近この中を選挙していた青魚の姿も、ようやく見えなくなった。両親が出立前に買いだめしたアジもそろそろ鮮度が心許なくなったので、昨晩は油で揚げて蒲焼きのタレに漬けて食べたのだ。
 初めて作った料理だったけれど、なかなかうまくできた。宇宙人共にも大好評で、クトゥグアなどは無表情でご飯を三杯もおかわりしていた。その様子を「居候のくせに図々しい」とニャルラトホテプが力強く罵倒していたが、奴も同じくらい大飯食らっていた事を真尋は絶対に忘れない。
 中途半端な時間なので、朝は簡単に済ませて昼にしっかり食べよう。そう思って真尋は、冷蔵庫から卵とベーコンを、野菜室からはレタスを取り出した。卵は鶏卵である事をしっかり確認する。またいつだかのようにシャンタッ君の卵でも紛れ込んだら洒落にならない。
 (逢空万太『這いよれ!ニャル子さん3』、ソフトバンククリエイティブ、2009、p.21)


料理の時間と次の食事との兼ね合いまでしっかり計算している真尋はまことに主夫的な感覚の持ち主です。
そうして見れば、邪神たちの暴走を制して仕事をしているかどうかツッコむのも、家政を管理し、家人が仕事をしているかどうか見張る感覚に近いのではないでしょうか(なぜ自分が宇宙から来た公務員の仕事まで監視しなければならないのか、真尋は不満でしょうが)。
これはやはり、自分の立場に相応の責任を果たそうという意識です。

一見関係ないようですが、実はこれと関連してくるのが年齢ネタです。

「しかしまあ、それは冗談としても授業は受けた方がよいのでは。私も特待生とはいえ大学受験を経験した身で言わせていただきますと、高校二年生の単元ってのは意外に出ますよ」
「……前々から気になってたんだけどさ」
「はい?」
「お前、いくつなの?」
 真尋が問いかけると、ばっ、とニャルラトホテプはものすごい勢いで明後日の方向を向いた。その態度たるや、胡散臭さを通り越してむしろ清々しささえ感じさせる。
「昨日、幻夢境で話してたよな。高校卒業して大学卒業して惑星保護機構に就職したって」
 真尋がさらに突っつくと、ニャルラトホテプはこちらに一切目を合わせずに口笛を吹き始めた。どこかで聞いたことがある極だと思ったら、口笛と荒野のRPGのメインテーマだった。
「宇宙の時間の流れなんて分からないけど、地球に換算したらお前ってもしかしてにじゅ」
「アーアーきこえなーい!」
 真尋の言葉を遮るように、ニャルラトホテプは両耳を塞いで声を張り上げた。ここまで過剰に反応するという事は、ひょっとしたらひょっとするのかもしれない。
 (同書、pp.95-96)


少なくともいい年した大人、勤続期間次第ではもしかするとアラサー(=アラウンド・サーティー、27~33歳)以上、揃ってオタク、職場で嫌われている疑惑があったり(ニャル子)最近までニートだったり(クー子)……と考えると急に哀愁すら漂ってきます。
もちろん、そこまで行くとかなり穿った読みですが。

対してアニメにこのネタはなく、ニャル子の兄のニャル夫が大学浪人して受験勉強している回想シーンはありましたが、そこでニャル子自身の学歴は触れられていませんでした。
どうもアニメは、ニャル子を本当にティーンエイジャーのように思わせたいようです。

「いい大人」ではなく責任意識も未熟な若者たちが、その未熟さゆえに衝突して繰り広げるのがラブコメだ――そのような信念に基づいてこのような改変が行われているのなら、――個人的には必ずしも全面的に同意はしないにせよ――自分なりの筋を通した作品を作ろうとする姿勢は一定の評価をするに吝かではありません。


ただ、それとは別にどうも肯定しがたいのは、コンテンツを使い潰そうとする姿勢です。
たとえば、第11話ラストでニャル子達が消えるのは、原作9巻と重なる展開です。ただ、『涼宮ハルヒの消失』と違って、そこで「ニャル子達を取り戻すかどうか迷わない」ことにこそ特徴を見いだした私の解釈とはやはり正反対になりそうですが。
もちろん、アニメに続き(フラッシュアニメから数えて第4期)があるかないかと言えば、ない可能性の方が高いわけですが、メンバーを揃えることばかり急いで今ひとつスポットが当たらず活躍しないキャラと言い、息の長く使えそうな部分を乱暴に使い潰す傾向が見えるのは遺憾なことです。

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プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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