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二つの現代的プラトニズム

以前に引用したものをもう一度。

 私が物理学の研究を始めた時、私たちが自分たちの周りに見ている世界の背後の実在は何らかの美しい数学的法則によって形成されており、その法則は永遠に存在していて、私自身のような短命で小さな生物の存在を超越しているのだと想像していた。これは私が青年期にアインシュタインを読んだ時に学んだイメージだった。成長し、徐々に物理学者となっていくにつれて、こうした見方に魅了されたのは自分が最初ではまったくないことを学んだ。プラトニズム――移ろい行く知覚可能な世界の背後にある永遠で抽象的な世界の探求は、古代から現代まで物理学者と数学者たちの探求を推進してきた。(……)
 (Lee Smolin, The Life of the Cosmos, New York, Oxford University Press, 1997, p.15 〔リー・スモーリン『宇宙は自ら進化した―ダーウィンから量子重力理論へ』野本陽代訳、日本放送出版協会、2000〕)


変化にも何らかの法則性があり、何が起こるか予想できないと現実にも困りますから、このような考え方はある程度まではまったく自然なものです。
ただ、「永遠で抽象的な世界」こそが本物で、「移ろい行く知覚可能な世界」は幻だ、と思うようになると重症のプラトニズムと言えますが。

そしてもう一つ注目すべきは「美しい数学的法則によって形成されて」いるという箇所です。
ガリレオ「宇宙は数学の言葉で書かれた書物である」と言いましたが、その考え方は今に至るまで現代科学に引き継がれているということです。これもある程度までは、大砲の弾道を計算するような実践的な事柄の延長上にあると言えるでしょう。

さらに「物理学者と数学者たち」とありますが、物理学者の求める「永遠の世界」――プラトンの言葉で言えばもちろん「イデアの世界」――は物理法則の世界であるのに対し、数学者は数学的対象――たとえば数字など――の世界が実在すると考えています。
常識的には、物理法則ならばまだわれわれに関係なく存在しているようにも思えるのに対し、数学はそれこそ数学をやる人間の頭の中にしかないように思われるので、これは一見すると異様です(「一個のリンゴ」や「一人の人間」ならありますが「一というもの」がどこにあるというのでしょうか?)。

以下の対話本など、そうした数学的世界の実在を主張する数学者コンヌと、そう考えない生理学者シャンジューとのすれ違いがほぼ全編に渡って展開されています。

考える物質考える物質
(1991/08)
ジャン・ピエール シャンジュー、アラン・コンヌ 他

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しかし――揚げ足を取るように思われるかも知れませんが――「物理法則の世界」が「数学の言葉」で書かれているとしたら、「数学の世界」は何でできているのでしょうか? 「数学の世界」そのものも「数学の言葉」で書かれているのでしょうか? それとも「数学の世界」そのものは、数学者の用いる記号とは別物なのでしょうか?
この点で、物理学者のプラトニズムと数学者のプラトニズムは大きく異なる可能性があります。

もちろん、この点に関する考え方は数学者個人によっても大きく異なります。
ただ言えるのは、このような問いは「数学を可能ならしめる数学者(人間)の思考の実態はどんなものか」という問いに近付くのであって、こうなると「どちらにせよ“永遠の世界”など人間の頭の中にしかない」と考えていた人にも無関係ではなくなってきます。
実際、私はロジャー・ペンローズの――「意識」の問題に関して野心的な問いを投げかけた――著作を読んで、まさしくこのような問いを見て取ったのでした。
「永遠の世界」などさほど本気で信じてはいないつもりでいても、実はこの世界の計算可能性――つまり、「数学の言葉」で書かれた法則の世界の上にこの世界が成り立っていること――を素朴に信じていることがある一方で、数学者というのははるかに豊かな見方を持っていることがあるのだ、と。

皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則
(1994/12)
ロジャー ペンローズ

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私の思索の原点です。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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