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あくまで正統派魔法少女――『おと×まほ15』

最新発売されたライトノベルがだいぶ溜まっています。
この作品、はある意味でオーソドックスなストーリーなので、大まかに紹介しただけであまり特筆する文言もないままでしたが、気が付けば15巻というレーベル屈指の長期シリーズとなり、そしていよいよクライマックスです。

おと×まほ 15 (GA文庫)おと×まほ 15 (GA文庫)
(2012/07/17)
白瀬 修

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既刊のストーリーを見ると、まず1~3巻が第一シリーズで、3巻ではそれまでの戦いのバックにいたボス敵と戦って倒しています。4巻が短編集で、5~7巻がまた、主人公の相棒の猫・モエルの正体と調律師(=魔法少女)を束ねる組織・瀬乃を巡る一連のストーリー。そして8巻が短編集になった後、9巻で新たな敵の存在が示されてからのストーリーがこの15巻まで、12巻に短編集も挟んで続いていました。
このエピソードが長めである理由は、やはり11巻で彼方が中学2年生に進級すると同時に登場、彼方の友達と同時に白姫家の居候のなった第2の男の娘・野々下深未の存在でしょう。14巻ではいよいよ深未が正体を現して敵に回り、この最新15巻は冒頭から決戦ムードです。
途中で牧歌的な短編集まで挟んだのも、全ては彼方と深未を仲良くならせてから対決させるため……非常に計画的です。

そして15巻はいよいよ最終決戦です。昔登場して、もう忘れられたかと思っていたサブキャラも揃って再登場し、クライマックスに相応しい盛り上がりとなっております。
女の子扱いされて彼方が「ボクはオ・ト・コだーっ!!」と叫ぶのも毎巻やっている定番ネタでしたが、この15巻ではなんとそれをクライマックスに持ってくる有様です。しかも、ちゃんと盛り上がっています。

この巻のあとがきでは昔の秘話がありましたが……

 実はこの作品、投稿時は一巻から三巻までの内容をまとめて一本に詰め込んだ作品でした。今考えてみるとなんて無謀、というか超展開なんだと思ったりしますが、なんと幸運にもそれを拾っていただき、ありがたいことに三巻に分けるという提案までしていただいたわけです。出版社の方々には本当に感謝してもしきれません。
 (白瀬修『おと×まほ15』、ソフトバンククリエイティブ、2012、pp.332-333)


どうりでデビュー作となる1巻から、基本的にはストーリーがまとまっている上で「最近ノイズが集中的に発生している」といった次への伏線もあったわけで……最初から大きなストーリー構想をもってやっている作家だったのですね。
同時に、編集部も見事な判断でした。

そしてこれほどの長期に渡り、次第にサブキャラが増えながらも、驚くほどブレていない作品です。
ほとんどの巻は基本的に、前半は小規模なバトルも差し挟みつつの日常、後半は強大な敵との対決という構成で、そのバトルパートも熱く、各キャラの能力を活用してよく練られたものです。
が、その全ては究極的には「男の魔法少女」である主人公の「彼方を辱める」という方向に向けられています。

 そしてそれからも続刊ということになるのですが、驚いたのは読んで頂いている読者様の熱量、とでも言えばいいのでしょうか、懐の広さとでも言うべきでしょうか。とにかくサービスシーンのほとんどは男の子、そして巻を増やすごとに肌の露出が増えるのも男の子、という作品であるにもかかわらず“女性キャラをもっと出せ!”といった苦情がなく、それどころか“もっと彼方を辱めろ!”というような意見が多かったのは、驚きを通り越して感動でした。
 (同書、p.333)


この作品の徹底したブレない軸は、読者にもよく理解されていたようです。
しかも、定番の(辱める)ネタをきちんと押さえて夢を叶えてきましたからねぇ。

先日紹介した『俺、ツインテールになります。』も男の主人公が美少女の姿に変身して戦うヒーロー物でした(ただし、こちらは女装ではなく性転換)が、これは指摘した通り見事にセクシュアリティとシリアスさが排除されていたのに対し、『おと×まほ』は恥ずかしがりつつ女装させられる彼方がまさに軸であると同時に、魔法少女バトル物としても熱いものです。
「ノイズ」と呼ばれる敵の怪物たち(そう言えば、このネーミングの敵――もっと言えば音楽モチーフのバトル物全般――も最近では『スイートプリキュア』等、結構な数見かける気がしますが…)はたいてい動物をモチーフとした姿で、人間的な意志を持たず、動物の感情移入を拒むような性格やグロテスクさが強調されますし、人間の敵も濃いキャラであったり闇を抱えていたりする連中揃い。ふざけた設定・展開とは別にシリアスな方の盛り上がりをきっちり描いています。

ただ、『おと×まほ』にもセクシュアリティに関する問題はありまして、

・彼方は普段から長髪で女の子にしか見えない外見
・日常パートでもあの手この手で扮装(女装)させられる
・そもそも彼方自身の性意識が不明瞭。いじられる側に回ってばかりで異性を意識する場面もごく控え目で、性別不詳のイケメン(人外なので)にも靡きそう

といった点はいわゆる「女装少年」ものとしては難にもなり得ます。
しかしやはり、本作は愛と正義と希望の魔法少女物としては圧倒的に面白いのです。
アニメのバンク映像を意識した、服が消えて変身後の衣装が現れる変身シーンといい、「アニメ・まんが的リアリズム」で魔法少女物の世界を文章化することによく成功した作品の一つで、山場では効果音まで聞こえそうな演出も見事です。
が、単に普通の魔法少女物に徹するだけでは埋もれてしまう可能性も高くなります。やはりただ1本ふざけた設定を筋として通したのが成功の秘訣でしょう。

そのクライマックスに相応しい一幕を――

「男の子なのに、魔法少女。確かにありえない。根本的に矛盾してる。でもキミは現実に今、魔法少女としてここにいる。ありえないことをやってのけ、絶対矛盾をはねのけて」
 それってつまり、と続けてモエルは嬉しそうに言った。
「キミこそが――“人は誰でも魔法少女になれる”という証明じゃないか」
 (同書、pp.293-294)


今年の『プリキュアオールスターズ NewStage みらいのともだち』における「女の子は誰でもプリキュアになれる」は「プリキュア」の定義の不明瞭さを的確に衝いた展開でしたが、こちらはもはや「女の子」という枠すら突破しています。
(本作でも、魔法少女――正式には調律師(チューナー)――になれるのは女性のみで彼方はまったくの例外という扱いですが、それ以上の点においては調律師になれる条件は必ずしも明瞭ではありません。女性のみである理由は、古来魔力を扱うのは女性であったとか言われてはいますが…。ちなみに年齢制限はないので、「少女」でなくても可です)
これはただの冗談を超えて、魔法少女の存在に関する問いでなくて何でしょうか(多少誇張あり)。

最後に、これで最後と思っていた読者には嬉しいお知らせが一つありました。

 と、こんな風にいかにも最後っぽく締めくくっておきつつ今さらなのですが。
 ――実は次の巻がおと×まほ最終刊です! もう物語とかじゃない、彼方を辱めるのみだ!
 (同書、p.333)


最後にもう一冊短編集のようです。

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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