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信仰を持てない苦しみに

実に無節操にあれやこれやと書いていることに疑問も抱きつつ――
京極夏彦氏原作の小説『狂骨の夢』のコミカライズが4巻発売、同時に掲載誌である『コミック怪』も新号発売です。

狂骨の夢 (4) (怪COMIC)狂骨の夢 (4) (怪COMIC)
(2012/07/24)
志水 アキ

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コミック怪 Vol.19 2012年 夏号 (単行本コミックス)コミック怪 Vol.19 2012年 夏号 (単行本コミックス)
(2012/07/24)
京極 夏彦

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単行本4巻は前号掲載分まで。
巻末ではいよいよシリーズ第1弾にして京極氏のデビュー作『姑獲鳥の夏』のコミカライズが予告され(『狂骨』の次となる『鉄鼠の檻』は『姑獲鳥』のネタバレを含むので、そうならざるを得ないでしょう)、設定画も掲載されています。

姑獲鳥 設定画
 (京極夏彦/志水アキ『狂骨の夢 4』、角川書店、2012、pp.186-187)

美女のイメージが合うとか合わないというのは難しい問題ですが。

『コミック怪』の方はと言うと…まず『百器徒然袋 山颪』が完結です。3ヵ月後くらいには単行本が期待できるでしょう。
『狂骨』は単行本の量から考えても次で完結くらいかと思われますが……

昔読んだ時には、(ホラー的ミステリという本筋を別にすれば)朴念仁で枯れた男である伊佐間と人妻である朱美(あけみ)の恋愛と言えるかも微妙な一時のロマンスが印象的だった本作ですが、今見ると信仰を持ちたくとも持ちきれない者達の苦しみが主題の一つであることがよく分かります。

ネタバレを避けようと思うとあまり書けませんが、一番の核心部分の解明――そして「死者の復活」――は次回となります。

 ~~~

(扱うネタの落差が著しいものの前回の続きを少し)

「キャラクター小説」たるライトノベルの要であるキャラにも性の扱いは影響していて、『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』の登場人物は、小学生レベルの(しかし時としてえぐい)下ネタを連発する綾女といい、「科学者として」真面目に性に圧倒的な知的好奇心を示す氷菓といい、「清楚な先輩」から後半思いがけぬ暴走を見せるアンナといい、一般的な「エロス」や「可愛さ」――あるいは「萌え」――からはかけ離れています。イラストもその点できわめて的確ですね。
もっとも、萌え化する力能はここにも発揮できるものかも知れませんが……とかく、普通の可愛さなどというケチなものを突き抜けた豪快にして爽快な性の意識によって特徴付けられるキャラもまた、重要な持ち味です。

最後に、「性」と「知」という、どう考えても元々遠いものを著作の表題で並べた思想家のことをいくらか参照しておきます。

(……)もし性が抑圧されていれば、つまり禁止され、存在しないことにされ、沈黙を強いられていれば、それについて語り、その抑圧について語るというそれだけの事実が故意の侵犯をほのめかすことになる。(……)
 (Michel Foucault, Histoire de la sexualité I. La volonté de savoir, p.13 〔ミシェル・フーコー『性の歴史I 知への意志』〕)


(……)われわれは要するに、各人が自らの性を打ち明けるのを聞くことで担当者が報酬を受け取る唯一の文明である。
 (Ibid., p.14)


 しかし、経済的な影響よりもいっそう本質的と思われるのは、性、真理の啓示、世界の法の転覆、別の時代の告知、そしてある至福の約束が一つに結び付いている言説がわれわれの時代には存在する、ということである。今日、性こそが、西洋においてはかくも馴染み深く重要な説教の古い形式の支えとして役立っているのである。
 (Ibid., p.15)


(……)私が立てたいと思う問いは、なぜわれわれは抑圧されているかではなく、なぜわれわれはたいそうな情熱と、われわれのごく近い過去、現在、そしてわれわれ自身に対するたいそうな恨みをもって“われわれは抑圧されている”と言うのか、ということである。
 (Ibid., p.16)


フーコーはここで「性を抑圧する権力があり、それに抵抗することは権力にとって不都合である」といった常識的な構図を外れて、むしろわれわれが抵抗したがることこそが権力にとって意味を持つ可能性を問うています。
とはいえ、もちろん、ライトノベルにこのレベルの考察を求めはしません。

ここで注目したいのは、性の打ち明けがことさらに聞かれる価値を持ち、「真理の啓示」とまで結び付くことです。つまり、自分の性についてカミングアウトすれば、それこそがその人についての「真理」となるわけです。
他方、『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』においては個人の性どころか、性知識一般が「秘められた深遠なる知識」と化しています。
その辺りが興味深いところですね。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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