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旅情ライトノベル(おそらく少数派)――『僕は君たちほどうまく時刻表をめくれない2』

ガガガ文庫ならもしかして可能性はあるか、と思ってはいましたが、鉄道ライトノベル『僕は君たちほどうまく時刻表をめくれない』の2巻が(なんと)発売されました。

僕は君たちほどうまく時刻表をめくれない 2 (ガガガ文庫)僕は君たちほどうまく時刻表をめくれない 2 (ガガガ文庫)
(2012/07/18)
豊田 巧

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旅というのは第一義的には未知の地を目指すものです。行き慣れた地に何度も行くこともありますが、やはり普段の生活では感じられないものを求める面はあるでしょう。
他方で、鉄道マニアが鉄道の旅をするのは、鉄道というもっともよく馴染んだ世界に安住し、閉じこもる行為ではないか、とも考えられます。
しかし本作の主人公・駿の立場を考えれば、まずは鉄道マニアの世界に触れること自体が未知の世界への冒険です。
このように、本シリーズは見方によって大きく意味が変わってきます。

実際、結構鉄道の基礎知識の説明が多く、マニアから遠い人にとっての鉄道への導入という役割も果たすでしょう。が、そもそも鉄道にまったく疎い読者にどれだけ読んでもらう機会があるかは未知数と言わねばなりません。

それはともかく、様々な旅先の景色と旅情を伝えるという点に関しては、本作はなかなかの――ライトノベルにおいては貴重といってもいい――ものを持っています。1巻では登場人物の姿がなく電車もしくは風景のみのイラストがカラー口絵に1枚、本編中に2枚以上はあったのも好印象でした。
とは言え、2巻では人物なしのイラストはなくなっているところが常識的になったというか、若干薄まった気もしますが。
それでも、いくつかの描写はなかなかに見事です。

この巻の行き先は江ノ島周辺ですが…

時刻表2巻 路線図
 (豊田巧『僕は君たちほどうまく時刻表をめくれない2』、小学館、2012、p.8)

 ビルの立ち並ぶ藤沢から始まって、住宅街を走り抜け、路面電車になったかと思うと、今度は海沿いと、江ノ電はコロコロと表情を買えた。
 ……江ノ電って気持ちいいな……。
 俺は素直にそう思った。
 (同書、p.181)


そして「海沿いの駅」。

時刻表2巻 鎌倉高校前
 (同書、p.185)

最初から駿が「たまたまテレビで見た」この駅を目指してきただけのことはあります。
そう考えると、これがクライマックスでもいい気もしてきますが、夏の(作中時間では夏休み明けですが)宿泊旅行の定番として怪談をやり幽霊騒動があって、1巻に引き続き時刻表ミステリをやったりで、あえて事件を起こして物語を進めねばならないという方向で詰め込みすぎた感もありますが……

その他、キャラにスポットが当たる面もありますが、

「私のお父さん、鉄道会社に勤めていて、田舎の小さな終点の駅長さんやていたの。私も小さい頃は家族で駅に住んでいてね、目覚ましはいつも始発列車の警笛だった。だから、駅で朝を迎えるのってすごく好きなの……」
 美優は遠くを見ながら、思い出すようなやさしい目をする。
 (同書、p.183)


こういうのも登場人物の思い出話であると同時にある種の叙景文なのではないかと思います。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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