オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
今回は仏文


ヴェリエールの小村はフランシュ・コンテのもっとも魅力的な村の一つに数えられよう。赤い瓦の尖った屋根を乗せた白い家々が丘の斜面に建ち並び、その丘の生き生きと生い茂った栗の木はほとんど曲がりがない。かつてスペインによって建てられ、今では廃墟となっている城砦の何百フィートも下をドゥー川が流れている。
ヴェリエールは北側をジュラ山脈の白峰の一つの高山に面している。ヴェラのギザギザした頂は11月の初寒から雪に覆われる。(……)
(スタンダール『赤と黒』)
小説に慣れていないので拙訳は今ひとつですが……
そんなわけで叙景小説の話でもしようかと思いましたが、まず京極夏彦氏のビジュアルイメージについてはさんざん語ってきたので今回は割愛。
私が愛知県芸の2年生の時、フランス語の演習で読んでいたテキストがル・クレジオの中編『モンド』でした。
不思議な浮浪少年・モンドと様々な人たちとの交流を描いた物語ですが、モンドの歩き回る街や自然の描写がまた何とも美しいのです。自然の音が聞こえてきそうな。
学生の演習テキストに使えるくらいですからフランス語としても比較的読みやすいものでした。
後で考えると、作者ル・クレジオはちょうど前年にノーベル文学賞を受賞していたわけですが……さらにほどなくして、別の演習では私の専門とするベルクソンを読むことになったのですが、ベルクソンもまたノーベル文学賞受賞者で、哲学者の中ではとりわけ模範的で読みやすい(「理解しやすい」かどうかは別)文体で知られています。
やはりまず読みやすくないとノーベル賞は取れないのか……と思ったりしましたが、実はル・クレジオも途中で大きく作風を変えていて、『モンド』は転換期(あるいは転換後)の作品でしたからねぇ……
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『モンド』は映画化もされています(しかし私は未見。演習で読み終わった後授業回数が残っていたら観るなんて話もありましたが…)。
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文字通り自分の描かんとする世界の「イメージ」を伝えられるかどうかというのは、作家のみならず誰にとっても実はかなり重要なことなのですが、ただ「内容を理解しているかどうか」を問う国語の問題にはしにくいのかも知れません。
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