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恋愛、それは神秘――『謎の彼女X』

今週が試験週間で、私は一応、今日で試験終了です。
レポート提出課題を事務経由で提出の場合、受付期間が明日8月1日~3日と大変短くなっておりますが…さらに、事務で一括して受け取っているはずが、授業によって締め切りに微妙な差があることも…?

 ~~~

さて、アニメ化しその放送も終了したところという微妙なタイミングですが、漫画作品のお話です。

謎の彼女X(1) (アフタヌーンKC)謎の彼女X(1) (アフタヌーンKC)
(2006/08/23)
植芝 理一

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植芝理一氏の作品は『ディスコミュニケーション』の頃から大好きでした。しかし、今になってアニメ化というのは、内容云々よりもまずはアニメの大量生産という事情を考えさせてしまいますが……

それはさておき、百聞は一見に如かずというわけでもないのですが、まずは画像を見ていただきましょうか。

謎の彼女X
 (植芝理一『謎の彼女X』、講談社、2006、p.1)

この世にSEXというものが存在することをはじめて知った少年は――
誰もがこう思うに違いない
自分がそれを初体験する相手はいったいどんな女性なのだろうか――と


このあまりにも的確に作品を表現したフレーズにまず見えるのは、なおも未知の分野である性という領域に対する強大な興味と幻想です。
強烈な幻想を抱き追い求めようとするこのエネルギーは童貞力とでも呼ばれうるものでしょう(「○○力」という言い回しもいい加減使い古された感はありますが)。

並外れた童貞力を通して見た神秘としての恋愛――それがこの漫画の主題です。

あとがきにも興味深い記述が見られます。

(……)十七歳――思春期真っ最中の少年にとって、少女とは、異質で不可思議でいろんな意味で圧倒的な存在。もし、あの頃の十七歳の自分に彼女がいたら、嬉しいのはもちろんですが、それと同じか、それ以上に戸惑いも感じたのではないか、と大人になった今、思います。そして、そう考えると、十七歳の少年に彼女ができるという状況は、実は、いわゆる「ロボット・アニメ」における状況に近いのではないか、と思うのです。少年が、巨大ロボットという圧倒的な存在の操縦者となることによって始まる、歓喜と戦慄の日々。少年が、女の子という圧倒的な存在と両想いになることによって始まる、喜びと戸惑いの日々。少年が未知なるものと出会い、新しく開かれ始めた世界の中で右往左往するという点において、この二つは似ているのではないか。
 (同書、p.206)


直後に自ら「かなり強引なこじつけ」と認めてはいますが、この記述は重要です。
そもそも、女の子という現実に存在するものをロボットという架空の存在に喩えるのが奇妙な話で、常識的には逆ではないでしょうか。
年長のパイロットが「いいか少年、愛機とは女のようなものだ、慈しんで乗ってやらなきゃいかん」とか何とか言う――容易に想像できる場面ですね。

しかし、実は女こそが巨大ロボットにもまして謎であり圧倒的である――それこそが本作のポイントです。
実際、「年長パイロット」から上記のように言われた「少年」としては「そもそも女の扱い方なんて分からないよ」と思うのではないでしょうか。そして「年長パイロット」もまた、女のことを分かった気になっているが、実のところきわめて限られた女性観から話をしている、というのがありがちな事態ではないでしょうか。


そんな本作のヒロイン・卜部美琴(うらべ みこと)は無口でいつも机に突っ伏して寝てばかり、授業中に急に大笑いしたりと奇妙な女の子ですが、主人公の椿明(つばき あきら)はある日、放課後の教室で、突っ伏して眠っていた卜部が机にたらしたよだれを舐めてしまいます。
一週間後、明は原因不明の熱を出して寝込み、それが長引きますが、そこに卜部が訪れます。彼女のよだれを舐めると、不思議と熱は癒えたのでした。
曰く、熱の原因は最初によだれを舐めた後、一週間に渡って取り入れなかったことによる禁断症状であり、結局病名は「恋の病」であると――

謎の彼女X3

謎の彼女X4
 (同書、pp.47-48)

常識的な文脈では自意識過剰にも見えかねない発言ですが、卜部は「彼女」となる女の子であると同時に、明を恋愛という神秘の世界へと導く預言者(ナビ)(※)でもあって、この言葉もいわば託宣なのです。
実際、美琴も明と自分の運命について“誰か”の声を聞いた、と言っています。

※ ヘブライ語で女性形は「ナビアー」だがその辺の話は割愛。


さて、よだれを舐めるというマニアックで変態的な性癖を物語の中軸に据えた点が(おそらくは人を選ぶ)特徴となっていますが(ちなみに、前々作『ディスコミュニケーション』では色々なことをやっていましたが、出発点でありその後も繰り返し描かれるのは「涙を飲む」でした)、その原点はある意味では単純なことのようで。

謎の彼女X あとがき
 (同書、p.207)

また、最初の引用画像ではサイケデリックな背景も特徴的です(この冒頭部、アニメでは花というメタファーで描かれていました。おそらく分かりやすく妥当な演出でしょう)。人物以上に楽しみ、力を入れて描かれている背景も植芝氏の作品の特色です。

謎の彼女X2
 (同書、pp.24-25)


画像の引用のしすぎもあって長くなったので、今回はひとまずこの辺で。ただ最後に、今回あえて「神秘」とか「預言者」とかいったタームを使ったことの正当な意義について強調しておこうと思います。

(……)人が神秘主義を恋愛の情熱のように自己表現するといって非難する時、愛こそが神秘的なものを剽窃することから始め、神秘的なものからその熱意、跳躍、恍惚を借りたのであることを忘れている。(……)
 (アンリ・ベルクソン『道徳と宗教の二源泉』)



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続・『謎の彼女X』

前回に引き続き漫画『謎の彼女X』の話となります。 言い忘れていましたが、本作のヒロイン・卜部美琴には、普段は前髪で目が隠れているという特徴もあって、明が彼女を好きになっ
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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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