オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
世にも奇妙な探偵業――『探偵・花咲太郎』シリーズ
その中の主要人物の一人、探偵・花咲太郎(三代目)と相方の少女・トウキ(本名:桃子→白桃姫→桃姫(トウキ))はこの巻が初登場で、その後スピンオフとなるシリーズで主役を張ることになります。
というわけで、今回のライトノベルはこちら。
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主人公の花咲太郎はペットの捜索を主な仕事とし、浮気調査がたまの大事件という普通の探偵。ロリコンであり、それを隠さず公言してもいますが、同棲している家出娘・トウキとは問題ない関係に留まっているくらいに節度ある人物でもあります(実際、ロリコンであるという設定そのものは、ストーリー上は驚くほどに意味を持ちません)。
しかし、花咲自身は「閃かない探偵」であるにも関わらず、トウキは行く先々で事件に巻き込まれ、しかも勘で犯人が分かってしまう特殊能力の持ち主……
この設定がシリーズミステリの主人公の「行く先々で事件に逢う」設定のパロディになっていることからも分かるように、物語はしばしば探偵小説をおちょくったような内容になっており、「嵐の山荘」的状況で事件に逢えば殺し屋よりも名探偵気取り(間違った推理で人に濡れ衣を着せる)の方が恐ろしい存在となり、探偵・花咲は推理などできないのでトウキの“事件に逢う”体質を利用して犯人をおびき出し、トウキは花咲に「名探偵」としての活躍を期待するもそれはつねに裏切られ、殺し屋が探偵事務所に依頼を入れ、ペット探しの依頼人の家が奇妙にミステリーな状況になっておりetc...
花咲も例によって倫理的にはシニカルなところのある人物で、
世の中の謎を解明する名探偵には賞賛が付きまとう。そもそも誰かに褒められないようなら、『名』は頭につかない。名は名実の名。名声の名。様々な名がそこにある、けれどそれは全て他人から与えられるものなのだ。賞賛として。名探偵は成金に近い。
(入間人間『探偵・花咲太郎は閃かない』、角川書店、2009、p.150)
と言い、褒められることなど期待すべくもなく「純粋な善意」から犯行を行った殺人犯に「犬や猫を捜す探偵にとって理想に近い形の思想」(同所)を見てしまったりしますが、殺人に協力するほどではなく、殺し屋・木曽川とはしばしば奇妙な共闘を繰り広げます。
殺人を防げるものなら防ごうとしつつ、木曽川を通報することもなく……
ちなみに、このシリーズは表紙絵もシルエットのみなので(しかしこのシルエット作画は左氏。なんともったいない使い方)、花咲&トウキのイラストは今のところ『みーまー』8巻のみです。

(『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん8 日常の価値は非凡』角川書店、2009、カラー口絵)
ちなみに後景にいるのは『電波女と青春男』のエリオ(10歳くらい、つまり『電波女』本編より6年ほど前)です。青髪が特徴的なせいか、イラストレーターが違ってもよく分かりますね。
うちの事務所に勤めている外人こと、エリオットに鼻の形が似ている気もする。宇宙人の視点から美を結集して作成されたような容姿を目指すと必然、似るものなのかな。
(同書、p.226)
という箇所で仄めかされていましたが、『電波女』には少ししか登場しないエリオの父親・エリオットが探偵事務所の一員としてレギュラー出演してもいます。
花咲太郎シリーズは第2巻『覆さない』が出てからもう2年半経っていますが、入間氏の作品はほとんどが世界観をリンクしており、花咲は最近では『時間のおとしもの』にもゲスト出演していました。
そして、今月の新作です。
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公式のあらすじを見ると花咲太郎が主要人物の一人として登場する群像劇である模様。
またイラストレーターは別人ですが、緑の帽子からして、表紙で背中を向けているのが花咲でしょうか。
ただこの新作、花咲の存在といい群像劇というスタイルといい、(あらすじを見る限りでの)主要人物の成人率の高さといい、何だかずっとメディアワークス文庫の方から刊行されるものかと思い込んでいました(電撃文庫よりメディアワークス文庫の方が対象年齢高め)。
そもそも電撃文庫の『みーまー』8巻が群像劇で花咲の初登場だったのを考えれば、電撃文庫からの刊行も別に不自然ではないはずですが。
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