オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
友情の総決算――『仮面ライダーフォーゼ THE MOVIE みんなで宇宙キターッ!』
ちなみに私は知り合いの女性陣に便利に使われているだけなので違います。
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さて、映画『特命戦隊ゴーバスターズ THE MOVIE 東京エネタワーを守れ!』および『仮面ライダーフォーゼ THE MOVIE みんなで宇宙キターッ!』(セット上映)観て来ました。
以下ネタバレありで。
『ゴーバスターズ』の方は、恒例の新巨大メカおよび合体ロボの登場ですね。
この初期型バスターマシンFS-0Oフロッグも中枢はバディロイド(ロボット)のエネたんで、またその人格が一癖あるわけですが……序盤は操縦桿を摑まれることも拒否していたこのバディロイドの心を摑むまでにもう少し焦点が当てられていても良かったような。
しかし、それをやると続く『フォーゼ』とネタが被るところだったので、これで正解だったのかも知れません。
そんなわけで『フォーゼ』ですが、『MOVIE大戦MEGA MAX』で宇宙生物に恋した弦太郎、今回は機械と友達になります。
『MOVIE大戦MEGA MAX』では敵の名前がサドンダスに超銀河王、フォーゼの新ステイツがスーパー1ステイツと、『仮面ライダースーパー1』へのオマージュが目立ちましたが、今回は『宇宙鉄人キョーダイン』および『大鉄人17』です。
冒頭でいきなり「宇宙鉄人」が登場、さらに仮面ライダー部の皆がロケットに乗って目指すの巨大人工衛星の名前が「衛星兵器XVII(エックスブイツー)」で、「XVII」はもちろんローマ数字の17です。
冒頭では『W』からお馴染み、本編にも少し登場した財団Xが登場、我望達と取引をしていますが……しかし今回の敵は財団Xではありません。
宇宙鉄人を連れた女工作員が取引されていたホロスコープススイッチを奪って行ますが、我望は立神と速水に深追いはさせず、「宇宙に行くというなら、仮面ライダーに任せよう」と、仮面ライダー部が関わることを見越したような発言。
ここで12個のホロスコープススイッチが取引され、奪われているわけですが、立神と速水が変身しているところを見ると、このスイッチはコピーのようです。もっとも、本編にまだ登場していないピスケス(魚座)まで一足先にコピーで登場することになってしまいましたが…(本編の次回予告を見ても、次回でピスケスが登場して以降の話ではなさそうです)
そんなわけでコピー(スイッチャーの人間無し)ですが、12使徒の勢揃いがあります。
さて、この映画は衛星兵器XVIIを止めるべく、仮面ライダー部の8人が宇宙に向かう話です。そのために急遽宇宙飛行の訓練をやっているとか無茶な設定ではありますが、仮面ライダー部の「みんな」の1年の締めくくりに相応しい内容なのは確かでしょう。
また、宇宙行きに使うシャトルが『MOVIE大戦MEGA MAX』でレム・カンナギの使っていた「エクソダス」のマークIIであって、『MEGA MAX』の回想も少し入るなど、前の映画との繋がりも強調されています。
監督の坂本浩一氏曰く、
(……)そのくだりを中盤でやっているのも一つの宣言です。前回クライマックスでやったことを今回は中盤でやって、さらに「その先」へ進んでいきますよ、と。(……)
(映画パンフレットより)
とのこと。
さらに、『ディケイド』以降、夏の映画で次の新ライダーのお披露目となるのも定番ですが、今回はそれ――仮面ライダーウィザードの顔見せ――もこのシャトル乗り込み前、前半にやるという新趣向です(まあ、後半はずっと舞台が地球外で、さすがに他のライダーが来る余地はないという事情もありますが)。
なお、『仮面ライダーW FOREVER 運命のガイアメモリ』におけるオーズと『仮面ライダーOOO WONDERFUL 将軍と21のコアメダル』におけるフォーゼは変身前の素顔も見せていましたが、今回はそれはありません。
さて、後半の山場はいつもの『フォーゼ』のテーマ、友情です。
地球を守り、何よりもXVII自身を助けて友達になるため力を使い果たしたところで宇宙鉄人キョーダイン(名称は本当にそのまんまです)に攻撃され、絶体絶命のピンチに陥る弦太郎。助けるためには新スイッチが必要だが、そのためのコズミックエナジーを得る源は「絆」――弦太郎のことを思う者達が40のアストロスイッチを一斉に押さなければならない、ということで、仮面ライダー部員達が学園の皆に頼んで回ります。「弦太郎のために」と。
必死で頼んで回る部員の姿と、今までのゲストが次々に登場する展開はまさしく「友情」の総決算のようで最高に熱いところ。
それでも「まだ残ってる」と泣き顔になるユウキに「城島くん、私にできることがあれば」と声をかけたのは――なんと理事長の我望光明その人でした。
ここで近年の映画との対比を見てもよいでしょう。
映画ではストーリー上、本編とは別の敵を用意することになりますし、それに対する本編の敵の関係は微妙なものです。『仮面ライダーW FOREVER 運命のガイアメモリ』では、園咲琉兵衛はガイアメモリを使用不能にされつつも余裕ある態度を崩さず、戦いを傍観していました。今回の映画の我望も、日本列島を破壊するという宇宙鉄人の宣告を受けつつも、「逃げましょう」という速水に対し「面白いものが見られるかも知れないよ」と泰然と構えて見せます。『仮面ライダーOOO WONDERFUL 将軍と21のコアメダル』のラストバトルでは、グリードたちがオーズに一時的に手を貸し、コアメダルを渡してくれます。
また、クライマックスのピンチで皆の想いが届いて…というのも定番で、『仮面ライダーW FOREVER 運命のガイアメモリ』ではやはり今までのTVシリーズのゲストが揃って登場、風都の皆の祈りによってWは力を得てゴールドエクストリームに変身、逆転勝利します。
しかも『運命のガイアメモリ』のこのシーンは風都の象徴であるタワーが破壊される場面から繋がっており、国レベルでの「皆」を代表する「正義」を「街」レベルに縮小することで成功している、という宇野常寛氏の指摘はそれなりに正当です。
しかし、『W』の「風都」に相当する『フォーゼ』の舞台は『天ノ川学園高校』ですが、これは実は敵ボスである我望光明がゾディアーツを生み出すために作った箱庭です。
しかも戦いの舞台は学外どころか宇宙であって、作中で繰り返し強調されるキャッチフレーズは「学園と世界と宇宙の平和を守る仮面ライダー」(という、いささか無茶なもの)です。
謎の怪物(ゾディアーツ)と仮面ライダーフォーゼの存在は学内でも知られていますが、ここで問題になのは「だから皆がフォーゼというヒーローを信じている」ということではなく、あくまで一人一人と対面して築かれた友情です。
『運命のガイアメモリ』における皆の呼び声が「仮面ライダー」だったのに対し(これを最初に口にしたのが普段翔太郎とフィリップを名前で呼んでいる鳴海亜樹子であるというのが象徴的でもあり、いささか妙でもあるところです)、今回は「弦太郎(さん)のために」であるところも重要です(しかも問題はあくまで「弦太郎のピンチ」であって、地上では一応にも「危機は去った」と報道されています)。
もちろん、2週で1エピソードで一人ずつ「友達」になっても40人には足りませんから、この中には直接弦太郎と「友達」の儀を行ったのではない者もいます。たとえばJKの旧友である五藤東次郎など、カプリコーンゾディアーツになっていた間の記憶は消されていますから、弦太郎との関わりなどあまり記憶にないはずです。それでも、JKから頼まれれば「おう、いいよ」と二つ返事で引き受けます。
「友達の友達はまた友達」というわけにはいかない、あくまで一人ずつぶつかってこその友情だというのも今まで十分に描かれてきたことですが、友達が「こいつの頼みなら」という仲間の輪をさらに広げていけることの意味がここにあります。
我望が手を貸したのは、単に利害の一致ということにすぎないのかも知れません。40人の中でも弦太郎に対する想いのあり方は様々である以上、そういう者が混じっていても大丈夫だったのかも知れないでしょう。
しかし、彼が弦太郎を見込んでいるのも本当かも知れません。第38話で理事長に直接話を聞きに来た挙句「あんたやっぱり大した奴だぜ」と馴れ馴れしい口を聞いた弦太郎に対し、我望に心酔する立神は激怒していましたが、我望は「君の方がよほど大物だよ」といつも通りに笑って言っていましたし(もちろん、第一には皮肉なのでしょうけれど)。
いずれにせよ、出来合いの共同体の枠組みや、(正義のような)共通理念によるのではなく、君の正義と俺の正義の対立をも超えて、一人一人との対面関係によって築かれた共同性こそが力となる――そんな場面を見事に見せてくれました。
感動的でしたね。
(もちろん、『W』においても過去のゲストの登場が示す通り、個人との関係の積み上げというのはあったのでしょう。ただ、あくまで「この街」が強調され、しかも翔太郎とフィリップが仮面ライダーWとしてすでに活動を始めていて、街の人々からある程度認められてもいるところから物語の始まった『W』に比べ、そうした共同性の成り立ちから描いたという点が『フォーゼ』の注目すべきところです)
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