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それは青春の終わり……

昨日の話の続きをしようかとも思っていましたが、ひとまず水物の新しい話から。

『仮面ライダーフォーゼ』ですが、結局、校長・速水公平の裏切りは演技で、全ては蘭に自らスイッチを押させるためでした。
まあ、速水を助けるために蘭が自らスイッチを押してしまった時点で、「これこそが敵の目的ではないか?」という疑惑は当然考えられたわけですが……にもかかわらず「裏切り」に説得力があったのは、やはり速水の転落と小物っぷりが「彼は切り捨てられるのではないか」という危機感を自然なものと感じさせたことが大きいでしょう。お見事。
それに、人を見る目はあった弦太郎を騙しおおせたというのも重要ですね。

が、彼はその後まもなく、我望光明を庇って死にました。
我望に粛清されてダークネビュラに送られそうになった時には土下座して命乞いしていたのが、我望のためなら死ねるとは、最後に改めて忠誠心の篤さを見せました。
悪役として会心の活躍を見せたのとともに。

しかし他方で、「お前はダチに助けられたんじゃないのか!」と言われた我望は、「彼は私という太陽を巡る衛星。私を守るのは当然だよ」と。
直前に「私が君を見捨てるわけがないだろう」と言って、実際に切り捨てを恐れていた速水の心を摑み直していたというのに、本音はやはり他人を軽く見ているのが窺えます。こういうことを言われると、何だかかえって小物に見えてしまうんですよね。

それから、「コアスイッチ」は歌星賢吾の体内にあったことが発覚。このスイッチの力が、12個のホロスコープススイッチが揃うことで出現したダークネビュラを消し去り、我望の野望をひとまず先送りにします。
我望もコアスイッチの存在を知っておきながら、ホロスコープススイッチが揃ってしまえばよもやもう邪魔立てされることはないと見ていたようで……この辺は甘さでしょうか?

 ~~~

ライトノベル誌までは普段は買わないのですが、しかし雑誌掲載の短編が単行本未収録のままに残されてしまうことも(当然ながら)あるのですよね……

電撃文庫 MAGAZINE (マガジン) 2012年 09月号 [雑誌]電撃文庫 MAGAZINE (マガジン) 2012年 09月号 [雑誌]
(2012/08/10)
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『雨の日のアイリス』の新作短編(ただし続編ではなく本日の前日譚)なども掲載されています。

私の目当てはまずは入間人間氏に関するもので、新作『アラタなるセカイ』の最新情報と短編小説です。

と言っても、『アラタなるセカイ』については本当の新情報は多少の設定画等々が載っているくらいです。本編の「プロローグ」が掲載されていますが、これは入間氏の公式サイト(「入間の間」)にすでに掲載されていたのとほぼ同じもの。
しかし改めて内容を見ると……「明日、人類は滅亡する」ため、タイムループにより「明日が来ない」ようにしている現在(西暦2012年)、人類滅亡を食い止めるため過去にタイムスリップした組はいまだ映画館から一歩も外に出ることができず、6000年後の未来にタイムスリップした組はすっかり人類滅亡後の世界を目にする……

現在編・過去編・未来編と三手に分かれて三つとも積んでいるとしか思えないのが凄まじいところですが、しかし万事休すの滅亡は3倍しても滅亡に変わりはありません。
そこからどう動かすかが見所です。氏の場合、素直な救いになるのかは怪しいところですが。


入間氏の小説はこの『アラタなるセカイ』のプロローグの他に、もう一つのデビュー5周年企画『ハイパーイルマ大戦』『File.02』と『File.03』です。
これはその名の通り、氏の今までの作品のキャラクターが揃って登場する大甲子園的小説で、『File.01』と『File.04』はすでにWeb(公式サイト)にて公開中。
内容は『File.01』が『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』、『File.02』が『電波女と青春男』の続編で、『File.03』『File.04』は(『File.04』のサブタイトルに「一応は時をこえて」とある通り)年代差も世界観も超えて複数作品の登場人物が二つの錯綜した合コンに揃ってしまうという、よりお祭り的性格の強いものです。
単行本未収録短編まで押さえておかないと十分には対応しきれないという代物ですが…

しかもややこしいことに、『電波女と青春男』アニメ版のDVD1巻(初回限定版)の特典書き下ろし小説にはみーくんがゲスト出演していますが、『File.01』の『みーまー』続編はほぼ確実にこの前日譚となるもの。

他方、『電波女と青春男』の続編となる『File.02 まあ、近いうちに』はもう少し本編に関わる意味を持っていました。
そもそも、『電波女と青春男』は「青春ポイント」の獲得に勤しむ主人公・丹羽真が実家を離れて叔母・藤和女々の家に住むことになるも、そこにはまったく寝耳に水のことながら、簀巻きのように布団に巻かれて引き篭もっている従妹・エリオがいたという物語。
この話は巻による雰囲気の変化がとりわけ著しく、しかも真は原因不明に女の子たちにモテます。みーくんも相当にモテていましたがそれ以上に原因不明。
どうも途中からは、ライトノベルらしい「学園ハーレムラブコメ」を目指しているものの、入間氏独特のテイストで描かれるとどこか馴染まず(たとえば、ラブコメにおいて説明のないことは実際多い、主人公が原因不明にモテることにしても)、同時に氏の作品としてはいささか軽め、という印象もありました。

ただ一つ確実なのは、その主題は決してラブコメの「ラブ」にはなかったということです。
1巻冒頭の青春ポイントの説明を見ても――

 恋い焦がれる相手とデートするのは、十分に3点獲得の領域だ。ただ、ここで大事なのは、正式に恋人同士となった相手とデートしても、点数が加算されることはほぼないということである。あくまでも片思いか、恋人未満相手という条件が制限されている。
 (入間人間『電波女と青春男』、角川書店、2009、p.13)


あるいは、真が「青春ポイント」なる概念を持つきっかけとなった中学時代の同級生・星中小海とのエピソード(4巻収録)にしても、恋愛とは別に「青春」が追求されていた、というのがいわば締めです。

しかし、新しく住むことになった相手であるエリオは、いかに美少女であろうと、青春のドキドキする気持ちを駆り立てるような微妙な距離感にある相手ではなく、いきなり面倒を見なければいけない「家族」であり、それゆえに青春ポイントの上昇要因にはなりません。

所帯は青春の墓場――『電波女と青春男』の悲喜劇はそこにあります。
(もっとも、エリオが真にとって女房なのか娘に近い存在なのかは微妙なところですが。後半はどんどんはっちゃけていく叔母の女々さんの方が悩みの種になっていきますし)

だからこそ、今回の続編で結局藤和家に定着している真を見ると、然るべきものを見た思いでした。
ここでの所帯――藤和家――は思いがけず放り込まれてしまったにしても、とにかくもそこで生きていかねばならない状況であり、しかも(知らなかった情報があったとは言え)自分で選んだことでさえありました。そして、そんな放り込まれてしまった状況をとにかくも受け止めて生きていく人間――入間氏の作品には、いつもそれが描かれていました。
そして、状況に対する(無理矢理な?)拒絶が時として悪と悲劇を招くというのは、近作『クロクロクロック』でも見た通りでした。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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