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アーツ&クラフツ展

今度は速めに展覧会に行こう…というだけの理由では必ずしもないんですが、12日から愛知県美術館で始まったアーツ&クラフツ展に行って来ました。
アーツ&クラフツというのは19世紀にウィリアム・モリスとジョン・ラスキンによってデザイン・工芸運動で、アール・ヌーヴォーにも大きな影響を与えています。この展覧会も家具・壁紙・タペストリー・調度品といったものが中心でした。
ただ、産業革命での機械化に反対して民衆の間に伝えられた職人の技を重んじたアーツ&クラフツ運動ですが、その結果産まれた製品は大変手の込んだ高価なものとなって、一般の民衆からは遠いものとなっていったという実情もあります。いかにもヴィクトリア朝風という品々を見れば分かるかと思います。
さて、この展覧会の最後の方は「日本におけるアーツ&クラフツ」で、柳宗悦の民芸運動が紹介され、黒田辰秋や河井寛次郎といった人達の作品が展示されていました。

もっとも、柳は「用の美」を主張して「“名工の作”よりも無名の職人の作品を評価した」そうですけど、私はその辺にはあまり釈然としてません。「用の美」を唱えるからには逆に「通常の美」は「無用の美」だという前提があるのでしょう。確かに例えばファイン・アートの作品は美的鑑賞以外、何かの役には立たない。本来は何かの役目を持っているものにしても、装飾したりでその機能と関係のない「美」を追求している場合がある…というのは分かりやすいイメージではあるんですが、どうも現実はそう綺麗に分かれるものだろうか、と思えてなりません。
まあ実のところは、そういう「民芸的作品」と「名工の作品」が、それぞれ一括りにするとどう違うのか、見ていても今ひとつよく分からないからであって、単に私に見る目がないだけかと思いますが。
                           (芸術学2年 T.Y.)

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ゴーギャン展

ついつい間が開いてしまいますね。暇が全く無いことはなかったと思うんですが。
昨日は夜8時位まで残って作業してましたけど。そろそろ下絵のデッサンを完成させて先に進まないと残された時間が無かったんですが、特別講師の佐藤一郎先生の講評があって、またそれまでとは別の点を指摘されますし…。

それはそうと、名古屋ボストン美術館で行われているゴーギャン展に行って来ました。できれば終わってからではなく、リアルタイムで感想を書いておきたいので、その話をします。
火曜日に油の客員教授である歌田眞介先生の講義があって、その時「ゴーギャン展見た人いますか?」という質問に手を挙げた人が数人しかいなかったので「これはとんでもないことですよ。こうしたものはちゃんと見ておかないと」と言っておられました。いえ、お言葉ですが、見に行くつもりはありましたよ。ありましたとも。ただ忙しいやら何やらで先に伸びていただけで。第一、歩くよりじっと立っている方が疲れるので、1つ1つの絵の前に立ち止まってメモを取っていたりするとこれはかなり体力を使う行為であり、数は限られてくるんですね。
言い訳はこの辺にしといて、確かに大作《我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこに行くのか》が海外に貸し出されるというのは滅多にない機会らしく、それを知ってか結構賑わっていました。
しかし一方で、見て来た人からは「あれは下手」という感想も聞きました。確かに上手くはない。会場でもあの「上手いわね~」という感想は言えないらしく、代わりに耳にしたのは「この辺セザンヌに似てる。ほら、見たことあるでしょセザンヌ」という関連知識の披露(?)や、問題の大作の前での「こんな大きい絵なんだ~」という言葉でした(笑っていい場面か、どうか)。賞賛らしきものを聞いたのは、静物画の前で色遣いに感心していたものくらいでしょうか。

かくいう私も、(美術史的にどんな功績があるかということを知ってはいても)画集や入門書で作品図版を見てもゴーギャンはあんまり良いと思わなかったんですが、エルミタージュ美術館所蔵の《果物を持つ少女》の実物を見て、少し感銘を受けた覚えがあります。しかしどこがいいのかと言われると、今なお説明しにくくはあります。気付いてメモを取るころは色々ありましたが、「それが凄いのか?」と言うとそうでもないことがほとんどでしょう。
ただ、初期の印象派の影響を受けた、筆のタッチを集めて描くようなスタイルから、次第に輪郭線をはっきり区切って平坦に色を塗るスタイルへと、ゴーギャンの画業の変遷を追っているという点で、この展覧会は非常にはっきりしたものを見せてくれたと思います。ついでに言うと、「印象派の影響」とはキャプションにも書いてあって、私も先程そう言いましたけど、それは筆遣いこそそうであるものの、光を捉えようとした印象派と、全体の感覚はかなり違うと思いますね。結構、暗い色が多くて。
後は、《我々はどこから~》について言うと、美術館内は結構暗いですから、背景は本当に暗く見えて、その中で黄色い人物と、(これは本当に実物を見て気付いたんですが)青白い像もくっきりと浮かび上がって見えました。そういう画面作りについては成る程とは思いました。

まあしかし、やっぱり「それで、何が凄いのか?」と言われると困りますね。これでも細かい技法やら、まして美術史的な話は避けて、印象を伝えようとは思ったんですが。
                           (芸術学2年 T.Y.)

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アヴァンギャルド・チャイナ

愛知県美術館の「アヴァンギャルド・チャイナ」展を見て来ました。
中国の現代美術の展開を知る機会というのはそうなくて、貴重な展覧会でしたが、やはり閑散としていて、こういう現代アート展というのはあまり人気のないものなのかも知れません。

さて感想ですが、入り口の前でいきなりの《老人ホーム》(車椅子に乗った本物そっくりの老人人形達!)はなかなか衝撃的ですが、その後はしばらく、いわゆる「コンセプチュアル・アート」(頭の中の考えことがアートである、とするようなアート)の展示が続いていて、最初が「本を洗濯機で攪拌してできた、半分溶けた紙の塊」だったりします。やはりこういうのは、別に見て面白いものではありませんね。率直に言って。
学校ではよく「自分の目でしっかり作品を見ること」が指導されたりしますけれど、身も蓋もないことを言ってしまえば、こういう場合よく見てもやはり目新しいものは無いだろうな、というのが偽らざるところです。こういうものが登場した歴史的な経緯と意義のことはさておき、いつも通り作品をじっくり観察するつもりでいると、かえって戸惑ったりします。
まあ勿論、一方では上記の《老人ホーム》のように、それ自体面白いものも色々ありました。

が、作品の内容はさておいて、「この表現は、不安な信条を表している」等とキャプションに書かれているのを見ると、「誰がそんなことを決めたのか?」と思うことがあります。そうも思えることを否定はしません。調べてみれば実際そうだと分かるかも知れません。しかし、意外と根拠無く思い込みで言われていることも多いようなんです。この展覧会に限らず、非常によくあることですけれど。
ただ、さらに言いますと、よく言われる「偉い先生の言うことだからって鵜呑みにしないで、自分の頭でよく考えるように」ということが言いたいのでは、私はありません。世の中にはたくさん「実は信用できるのかどうか分からない情報」が出回っているけれど、私達はたいていそれを「偉い先生の言うことだから」信じている訳ではありませんし、第一こんなことは「自分の頭で考え」たって、永遠に分からないでしょう。
かく言う私もこうしたことに独力で気付いた訳ではなく、こういうことを問題にする先生がいたればこそです。ですからその先生に師事するのが一番よく分かると思うんですが、皆がそれは無理としまして、じゃあどう見ればいいか、ということですが、まず先人達が「どう見て来たか」という積み重ねもやはり重要でしょうし、その上で「それが正しいか」考えなければいけない。まず「根拠のあること」と「ないこと」の区別の仕方も必要でしょう。それでも間違わないとは限らない、「いつでも当てはまる解法」なんて無いと思います。

やはり脱線の方が多いような気がしますが、ひとまずこの辺りで。
                           (芸術学2年 T.Y.)

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「だまし絵」展 2

「だまし絵」展ということで、エッシャーの作品も何点か来てました。
現実には不可能な図形を描いたいわゆる「だまし絵」3作は揃ってましたね。

で、「美術史というとエッシャーとかもやるんですか?」と訊かれたことがありますが、率直に答えると、やりません。美術史の教科書では見たことがありません。大変面白くて人気があるのは間違い無いんですが、いわゆる「アート」とは見なされていない感がありますね。
でも個人の研究テーマにはなると思います。ダンスでも漫画でも卒論のテーマになってますし。そもそも、「何故あれはアートと見なされ、これは違うのか?」というのは非常に芸学的な問いだと思いますから。
という訳で、あの手のものでも興味のある方は是非本学へ。
                           (芸術学2年 T.Y.)

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「だまし絵」展

今回は大学の外の話で、《視覚の魔術 だまし絵》展(名古屋市美術館)に行ってきました。

混でましたね。そして騒がしい。
妙に子供連れが多くて、至る所で「これ何? 何が変なの?」と親子やカップルで話してるんですね。
別に文句を言ってる訳じゃありません。美術館は静かに鑑賞しなければいけない、ってことはないと思いますから。むしろ多くの人達がそれだけ「これは面白い!」と思っているのがよく分かりました。
私としても、普段は作品の細部を観察してメモを取っているのが、途中から内容の面白さにそれどころではなくなった位ですから。

ただ気になったのは、キャプションに書いてあることを「何? これどんな作品なの?」と訊いてる人が多かったことですね。混んでるとか展示の仕方のせいでキャプションが見づらかったという解釈もできますけど、どうも解説が存在してるという事自体、まるで気が付いてないように見えるんですね…
アートの入門書や学校の先生には「教科書やカタログの記述を鵜呑みにしないで、まず作品そのものをよく見なさい」という人がいて、私もそれは重要な構えだと思うんですけど、本当に全然予備知識無しで見たら、やっぱり分からないよなあ、という思いもあり、美術の鑑賞教育に関する問題の難しさが感じられます。

つい真剣な話に持って行ってしまいましたが、別に奇を衒っている訳ではありません。
                           (芸術学2年 T.Y.)

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プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

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コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
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